第14章 冬桜
幸くんが、私の目の前にきて、そして私の手を取る。
「もう、いなくなんないでよね」
何にも言えない。
だって、それにうなづけば、また嘘をつくことになる。
だから、
溢れた涙で誤魔化した。
ずるくて、弱いな、私は。
この時にちゃんと説明しておけば、良かったのかもしれないけど。
「おかえり、芽李さん」
幸くんの優しい声が鼓膜を揺らすから。
「ただいま」
って、答えるしかできなかった。
「まぁ、でも!
メイメイがフジに帰ってきたから、おひたしおひたしネ〜っ」
「無事に帰ってきたからめでたしめでたし、でしょ。
全く、こういう時くらいちゃんと締めてくださいよ、シトロンさん。
真澄と咲也もいうことないのか」
「俺はさっき玄関で言った。正直俺は監督がいればいい。…別に他はどーでもいいけど、でも、アンタがいないと調子狂う…気がする」
「おれは、…べつに」
どこか咲は、元気がなくて。
「残りのメンバーからもお説教あると思いますけど、甘んじて受け入れてくださいね」
と、綴くんに灸を据えられ。
秋組の台本は、みんなに怒られた後となかなか、きついことを言われ。
左京さんにもがっつり怒られたのは、怖すぎて思い出したくもない。
どのくらいかというと…
万里くんとは違い、
十座くんは女の子慣れしてないのか少しぎこちないけど、照れ笑いがイケメンすぎて、というか声良すぎない?
となり、
自己紹介をうけて、
やっぱり太一くんは天使でワンコ判定をし、
かわいい、
となり、
咲とセット売りしたら、地球どころか全宇宙が平和になると思った(真顔)。
と、
現実逃避したくなるくらいには、怖かった。
これ以上は思い出したくないので、あえて触れず…。
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「咲、そろそろ寝なくてヘーキ?」
「ん」
仕事の都合で天馬くんと至さんはまだ帰ってこない。
時計はもうすぐてっぺんを指す。
咲は何も言わずに、ずっと私のそばにいて。
みんなもその状況に何も言わず、談話室には私と咲の2人きり。
「咲…」
「ん」
「話そうか、ずっと…できなかったけど、待たせてごめん」
「んーん、…"おれ"も、その、色々、ごめんなさい」