• テキストサイズ

3月9日  【A3】

第14章 冬桜


 幸くんが、私の目の前にきて、そして私の手を取る。

 「もう、いなくなんないでよね」

 何にも言えない。
 だって、それにうなづけば、また嘘をつくことになる。

 だから、

 溢れた涙で誤魔化した。

 ずるくて、弱いな、私は。
 この時にちゃんと説明しておけば、良かったのかもしれないけど。

 「おかえり、芽李さん」

 幸くんの優しい声が鼓膜を揺らすから。

 「ただいま」

 って、答えるしかできなかった。

 「まぁ、でも!
 メイメイがフジに帰ってきたから、おひたしおひたしネ〜っ」

 「無事に帰ってきたからめでたしめでたし、でしょ。

 全く、こういう時くらいちゃんと締めてくださいよ、シトロンさん。

 真澄と咲也もいうことないのか」

 「俺はさっき玄関で言った。正直俺は監督がいればいい。…別に他はどーでもいいけど、でも、アンタがいないと調子狂う…気がする」

 「おれは、…べつに」

 どこか咲は、元気がなくて。

 「残りのメンバーからもお説教あると思いますけど、甘んじて受け入れてくださいね」

 と、綴くんに灸を据えられ。

 秋組の台本は、みんなに怒られた後となかなか、きついことを言われ。

 左京さんにもがっつり怒られたのは、怖すぎて思い出したくもない。

 どのくらいかというと…

 万里くんとは違い、

 十座くんは女の子慣れしてないのか少しぎこちないけど、照れ笑いがイケメンすぎて、というか声良すぎない?

 となり、

 自己紹介をうけて、
 やっぱり太一くんは天使でワンコ判定をし、

 かわいい、

 となり、

 咲とセット売りしたら、地球どころか全宇宙が平和になると思った(真顔)。

 と、

 現実逃避したくなるくらいには、怖かった。

 これ以上は思い出したくないので、あえて触れず…。


ーーーーーー
ーーー
ーー

 


 「咲、そろそろ寝なくてヘーキ?」
 「ん」

 仕事の都合で天馬くんと至さんはまだ帰ってこない。
 時計はもうすぐてっぺんを指す。

 咲は何も言わずに、ずっと私のそばにいて。

 みんなもその状況に何も言わず、談話室には私と咲の2人きり。

 「咲…」
 「ん」
 「話そうか、ずっと…できなかったけど、待たせてごめん」
 「んーん、…"おれ"も、その、色々、ごめんなさい」
/ 555ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp