第14章 冬桜
いづみちゃんが促してくれたから、ようやく談話室に入ったんだけど……
目の前には既に帰ってきていたメンバーと、横に陣取るのは先ほど鉢合わせした咲と真澄くん。
頭の上には、亀吉。
秋組のみんなはお風呂。
いづみちゃんは、帰ってきてくれたからと腕によりをかけて、カレーの支度をしてくれている。
支配人まで私を取り囲んでいる。
ビンビンと刺さる視線が痛い。
「あ、の…」
き、気まず過ぎる。
だって、私ただの寮母だぞ?
寮母っていっても、きちんと仕事できてなかったかもしれないけど。
監督でもなければ、支配人でも、役者でもないのに。
大道具でなければ、音声さんでも、衣装さんでも、クリエイターでもないのに。
「…心配してました」
先に口を開いたのは、綴くん。
それから、夏組のみんな。
「僕も心配してました。…今はいないけど、天馬君も至さんもみんな心配してました。帰ってきてくれてよかったです」
「むっくん…」
「めいがいなくて、毎日さんかく足りなかったぁ」
幸君だけが何も言わない。
「電話くらい、出てくれてもよかったじゃないっすか。繋がったのは、あの日のたった一回だけ。
もう、帰ってこないんじゃないかって、…」
綴くんの言葉になにもかえせない。
だけど、何か言わなくちゃ。
「それは、」
言いかけた時、口を開いたのは幸くん。
「それは?なに?」
少し冷たい言い方に、それすら仕方ないと思いながら答える。
…我ながら自分勝手だ。
「しばらく帰ってこられないんだろうって、自分でも分かってたから。…みんなの声きいてたら、帰りたくなっちゃうでしょ?」
「…呆れた」
「ゆきくん…」
「ゆっきー、」
「オレたち、どんな思いで千秋楽やったと思う??
ずっと本気でやってたけど、
千秋楽にはきっとあんたが来てくれるって信じてやってたんだよ?!
オレたちのこと見て、アンタがどんなふうに思って喜んでくれるんだろうって、だから頑張ったのに!
…帰ってくるの、遅すぎだ。
馬鹿」
そう言われたって、仕方がない。
「…ごめん」