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3月9日  【A3】

第14章 冬桜


 「もう一度、今度は本気でやって、お前らに勝ちたい。だから、戻らせてくれ」

 深々と頭を下げる目の前の彼に、ひどく安心してしまった。

 「万ちゃんが頭下げた…」
 「万里、お前…」

 見慣れない光景だからか、臣くんに擦り寄ってく赤髪のワンコくん。

 「…‥今後はリーダーとして、人一倍責任を果たすと約束しろ」

 左京さん…。

 「…分かった」
 「兵頭もそれで文句ないな?」

 金色の目が印象的だった。
 彼が、兵頭くん。

 「…っす、」
 「正々堂々やって、芝居への想いとかそういうやつも含めて、お前に完璧に勝つ」
 「…上等だ」

 めっちゃ青春じゃん。
 胸熱じゃん。

 良い感じだ、と思いながら私も寮に入ろうとした時、ぎろりと左京さんの目がコチラを捉えた。

 「ひっ」

 「お前には、まだ話が終わってない」

 ぎぎぎぎっとブリキの人形みたいに、顔を向ければ、絶対零度の笑顔がそこにあった。

 「あ、そうだ!みんなで風呂入りましょ!」

 ワンコくん改め、天使くんだった。
 助けてくれてありがとう。

 「は?」
 「なんだ、急に」
 「俺ら、これから風呂行こうと思ってたんス。万ちゃんも十座さんも左京にぃも一緒にいきましょ!」

 パチンとウインクをして、促すワンコくん。

 「あぁ、良いかもな。今までみんな微妙に時間ずらしてたし」

 安定のガチムチ天使。

 「仲直りは裸の付き合いッス」
 「何でそんなこと……」
 「たまにはいいんじゃないですか?行ってらっしゃい!」

 ニコニコっと送り出すいづみちゃんに、ここぞとばかりに乗る。

 「そうだそうだ!行ってらっしゃい左京さん!私は夕飯の支度しないとナー。
 忙しい、いそがしいー」
 「佐久間…」
 「ハイ…」
 「風呂から上がったら、覚えとけよ?」

 ぞわわっと背筋が凍る。

 ガチャガチャっとドアが回って、開く。

 「監督、ただい…………」
 「咲也くん、真澄くんおかえり」

 立ち尽くした咲と、ぐいっと掴まれた腕。

 「アンタ、今までどこにいたの?
 監督もみんなも心配してた。俺も…
 どうして電話でなかったの?メール、くれなかったの?
 あの日、至が電話に出たら電話切れたのはどうして?
 もう、俺らは、カンパニーは、」
 「ストップ、ストップ真澄くん。とりあえず中に入ろう」
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