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3月9日  【A3】

第14章 冬桜


 「アンケート、前座投票だけ先に集計してもらったよ。結果聞く?」
 「…んなもん、聞かなくても分かってる。兵頭だろ。
 監督ちゃん教えてくれ。どうしたら、俺は兵頭に勝てる?」

 万里くんの言葉に胸が鳴った。

 「万里くん…」
 「なぁ、どうすればいいんだ?」
 「…まずは、芝居に真っ直ぐ向き合うこと。それと、負けたくないって言う気持ち。こっちはもうあるみたいだね」

 いづみちゃんが優しく笑う。

 「兵頭のポートレイト見て、なんかわかんねぇけど熱くなった。アイツに喧嘩売って負けた時と同じくれぇ、興奮した
 このままじゃ終われねぇ、終わらせられねぇ」

 万里くんの、目つきが変わったのも見てとれた。

 「…一緒に、寮に帰ろう。もちろん、芽李ちゃんも」
 「今更だろ」
 「みんな、話せば分かってくれるよ」




ーーーー

ーーー

ーー



 「ただいまー!」

 万里くんと、いづみちゃんの後ろに隠れるように寮に入る。

 だって、今更…よく考えたらめっちゃきまづくない?

 「万ちゃん!帰ってきてくれたんだ!?」

 駆け寄ってきたのは、舞台にいた赤髪のワンコ。
 ひょえ…かわっ、かわええっ、うぅ…。

 「って、後ろの方は…………………まさか万ちゃんの?、」
 「まだちげぇよ、」
 「おかえり、カントク、万里、………芽李さんも」
 「臣くん」
 「え?じゃあこの人が?!」

 ポートレイトも見たけど、本当にいるなんて…。

 「臣くん、ありがとう」
 「…どういたしまして」

 「………何しに帰ってきた」

 優しく微笑んだ臣くんの後ろから、ごごごごごっと来たのは、左京さんだった。

 「二度とこの寮の敷居を跨ぐなと言ったはずだが」

 凄まじい剣幕に、私まで言われてるような気がするほどの迫力だ。

 「万里くんも考え直して」
 「簡単にやめるような人間を、仲間として信用できるわけねぇだろう」

 ズキッと痛む。

 ぎゅっと、万里くんの袖元を掴むとフッとこっちをみて、そのあとみんなと向き合って言った。

 その視線が、大丈夫って言ってくれてるみたいだったから、あえて見守る。

 「お前らの一人芝居を見た。正直負けたと思った。
 オーディションの時は間違いなく俺がダントツだって思ったのに、いつの間にかすげぇ差つけられてて、焦った」
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