第14章 冬桜
ブザーが鳴って真っ暗になった世界に、スポットライトがつく。
一筋の光で照らし出された舞台。
…始まった。
知らないメンバーももちろんいたけど、
…左京さんも、
…臣くんもいる。
なんだか、そのことに胸が熱くなった。
4人中2人は知らない子だったけど、片方は繊細ないい演技をしていて、こんないい演技をするなんて、天馬くんが喜びそうなメンバーだと思った。
こんな演技をするなら、綴くんも筆が乗るに違いない。
この子が主演の舞台もいつかみてみたい。
それから、もう1人は…
…。
隣に座った万里くんを見て、
その膝の上の拳に力が入ってくのを見て、
あぁ、そうかって、
思った。
だって、何も知らない私だって、
力強く、
その世界に惹き込まれた。
その子の思いが熱くて痛くて、
身が焦がれるような、そんな演技だった。
キラキラと光って見えた。
総じて、みんないい演技をしていたと思う。
だけど、
今まで見た4人のポートレイトのうち、
何よりグッときたのは、
1番、より気持ちがのっていたのは、
…。
万里くんがどうして彼に執着するのか、何となくわかってしまった。
だって、
今の万里くんと彼は、対極にいるような気がする。
初めて会ったときから万里くんは、世の中を少し冷めたような目で見ていた。
何でも知ってるような、全て手に入れてしまったような、そんな諦めににもどこか似たような、寂しい目だった。
…なんて、
「いい演技、するでしょ」
もう一度暗くなった舞台に目を向けていると、いづみちゃんが私だけに聞こえるように言った。
「うん…すごく、すごくよかったよ」
春組や夏組ともまた違う、秋組はどこか頼もしくて安心するような演技だ。
ここに万里くんが入ったらきっともっと、説得力を持つのに。
…なんて、思ってしまった。
万里くんを含めた5人のお芝居が見たいな。
綴くんの描いた世界の中で、舞台の上で生きるみんなのことが早く見たい。
強く強く、そう思った。
だから…
ねぇ。
どうか、
また火を灯して。
万里くんの気持ちに、情熱という火を。
灯りを。