第3章 支那実桜
「あ、いらっしゃいませ!すぐ、お店開けますね!」
「うん、ありがとうございます」
暖かな陽だまりのような、笑顔。
シャッターを開けて、外へと苗の入ったカゴを運びだす。
おばあちゃんはまだ来ていないと言うのに、同じように苗が入ったカゴを持って私の横を過ぎてくかげに、驚く。
「あ」
「ふふっ、珍しい顔みれた。
少し早く着きすぎたみたいだし、よかったら手伝わせて」
ひゅっと音がなる。
イケメンすぎて、私浄化する?
大丈夫そ?
「そんな、お客さまにしていただくわけには、」
「いいの、お礼。いつも良くしていただいてるもの。キミにも、おばあちゃんにもね。それに俺も男だし。少しの力仕事くらい手伝わせてよ」
圧倒的天使…。
直毛の少し青みがかった髪をしているのにトレードマークとも言えるアホ毛を、ぴょんぴょんさせながらニコニコしている。
天鵞絨町から少し行ったこの路地裏の花屋には似つかわしくないような、圧倒的天使感。
こっそり劇団員に誘おうと思ってしまうような可愛い系イケメン。
いや、でも…まずは立て直してからじゃないと。
そう、自分に鼓舞をするのは、彼に出会ってからというもの、もう数えきれないほどだ。
同じニコニコでも、支配人とはまた別にというか圧倒的にしっかりとした雰囲気がまたよかったりする。
その笑顔の裏に何があるの?!と思わせる完璧な表情…
「ふふ、また変なこと考えているでしょ?相変わらずだな、佐久間さん」
優しい声に、寒い朝に食べるホワホワのオムライスをおもいだす。
朝に出てきたらちょっとワクワクするようなオムライス。
あったかいから、寒い朝に食べてホッとするような、そんな声。
それでいて優しく弾んだ感じで、名前呼ばれたらファンサがすぎるって!
ファンクラブあったら絶対入るわ。
…よし、今日の夕飯オムライスにしよう。
「おーい、大丈夫?これ、こっちでいいかな?」
「う!!はい!!」
「あらまぁ、芽李ちゃんの元気な声がすると思ったらツムちゃん来てたのねぇ」
「おはようございます」
「おばあちゃん、おはようございます」
「2人ともおはよう。お茶でも飲んで行きなさいな。
芽李ちゃんも、お上がんなさいな。お店開けるのなんていつでも出来るんだから」