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3月9日  【A3】

第13章 ※不断桜


 「はい…あの!」
 「なに?」
 「天鵞絨町のMANKAIカンパニーが、わたしの居場所なんです!
 千景にさんにも知って欲しい!だから…だから、一緒に行きませんか?」

 それに、ふんわりと笑って

 やんわりと断ったのは彼。

 「俺にはやらなくちゃいけないことがあるから…‥また、誘ってよ」
 「今からどこに行くんですか、千景さんは」
 「…秘密。ほら、俺のことは良いから行きなよ。待ってるんでしょ、家族が」
 「でも、」
 「わかってる?春になったらまた君を、連れ去らなきゃいけないんだから今は1秒でも早く帰って、家族ときちんとお別れしてきて。
 今回みたいに泣かなくても、済むように」

 トンっと背中を押されて、

 「わっ、ちょ!」

 急だったから少しバランスを崩す。

 転びそうになって、体勢を立て直すように足に力をいれて、

 文句の一言でも言ってやろうと振り向くも、千景さんはもう人混みに消えてしまっていた。

 「………芽李さん?」

 少しだけ掠れたような甘い声が、鼓膜を揺らす。

 目があった、紫。
 長めの前髪が揺れる。

 「万里、くん?」
 「…ちょうどよかった。オレに付き合え」
 「は?!」

 ガシッと首に回った腕。
 高校生のくせに逞しすぎる。

 「学校は??」
 「今日は休み」

 少し機嫌が悪そうな彼に、少し重い荷物を持って引きづられる。

 「なぁ」
 「ハイ?」

 よく見れば彼もなんか色々、荷物が多い。

 「アンタ、こんな所でなにしてたんだよ?」
 「…まぁ、その。なんていうか、里帰り?」
 「痩せた?」
 「まぁ、少しね。ほら、細い方がモテるじゃん」
 「…オレは、前の方がいい。って、そんな話じゃねーんだよ。荷物寄越せ」

 少し強引に荷物をひったくられ、…って言う言い方は申し訳ないか。

 「いいよ、万里くんだって荷物多いじゃん」
 「これくらい、へーきだっつーの」
 「万里くんは、いまからどこか泊まり?それとも帰り?」

 聞かれたくないことだったのかも。
 万里くんの顔が歪んだ。

 「………カンパニー、辞めてきた」
 「え?」
 「だから、辞めてきたんだっつーの!」
 「カンパニーって…え?劇団!?」
 「そう」
 「所属してたの?!」
 「さっきまでな」
 「いつから?!」
 「最近」
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