第13章 ※不断桜
「はい…あの!」
「なに?」
「天鵞絨町のMANKAIカンパニーが、わたしの居場所なんです!
千景にさんにも知って欲しい!だから…だから、一緒に行きませんか?」
それに、ふんわりと笑って
やんわりと断ったのは彼。
「俺にはやらなくちゃいけないことがあるから…‥また、誘ってよ」
「今からどこに行くんですか、千景さんは」
「…秘密。ほら、俺のことは良いから行きなよ。待ってるんでしょ、家族が」
「でも、」
「わかってる?春になったらまた君を、連れ去らなきゃいけないんだから今は1秒でも早く帰って、家族ときちんとお別れしてきて。
今回みたいに泣かなくても、済むように」
トンっと背中を押されて、
「わっ、ちょ!」
急だったから少しバランスを崩す。
転びそうになって、体勢を立て直すように足に力をいれて、
文句の一言でも言ってやろうと振り向くも、千景さんはもう人混みに消えてしまっていた。
「………芽李さん?」
少しだけ掠れたような甘い声が、鼓膜を揺らす。
目があった、紫。
長めの前髪が揺れる。
「万里、くん?」
「…ちょうどよかった。オレに付き合え」
「は?!」
ガシッと首に回った腕。
高校生のくせに逞しすぎる。
「学校は??」
「今日は休み」
少し機嫌が悪そうな彼に、少し重い荷物を持って引きづられる。
「なぁ」
「ハイ?」
よく見れば彼もなんか色々、荷物が多い。
「アンタ、こんな所でなにしてたんだよ?」
「…まぁ、その。なんていうか、里帰り?」
「痩せた?」
「まぁ、少しね。ほら、細い方がモテるじゃん」
「…オレは、前の方がいい。って、そんな話じゃねーんだよ。荷物寄越せ」
少し強引に荷物をひったくられ、…って言う言い方は申し訳ないか。
「いいよ、万里くんだって荷物多いじゃん」
「これくらい、へーきだっつーの」
「万里くんは、いまからどこか泊まり?それとも帰り?」
聞かれたくないことだったのかも。
万里くんの顔が歪んだ。
「………カンパニー、辞めてきた」
「え?」
「だから、辞めてきたんだっつーの!」
「カンパニーって…え?劇団!?」
「そう」
「所属してたの?!」
「さっきまでな」
「いつから?!」
「最近」