第13章 ※不断桜
「やっぱり、君に最初に言っておくべきだったかな。こんな風になるなら」
サラッと髪を梳かれる。
「でも、君最初に言ったら、身構えちゃうだろ?………でも、今回は判断ミスだったかもな。傷つけてしまって、すまない」
ものすごく、優しい目で慈しむように落ち着いたトーンで言う。
フワッと抱きしめられて、思わずビクッとする。
トントンとあやすように、さすられる背中に私はされるがままになる。
「君の叔父さんと、俺の今の上司についてなんだけど…」
身体がこわばる。
「実は、悪の組織の一員でね」
まさかの一言に、拍子抜け。
「君はその悪の組織によって、囚われた月の皇女様なんだけど…って、こんなこと急に言われても信じられないよな」
真面目なトーンで、あまりにもファンタジックなことを言ってくるから、何が何だかわからなくなる。
「けど、事実なんだ。そして今、月では大変なことになっていて、元々あった重力が突然その組織によって奪われてしまって、我々月の民は…」
「その重力を取り戻すための算段として、悪の組織に潜入捜査する事にした。
そして、俺は自ら志願し、この職についたわけだけど。
敵を騙すなら、まず味方からってよく言うだろ?聞いた事ない?」
首を傾げれば、驚いたような顔。
「だから。俺は、敵のふりをして君に近づいた。君は無条件に俺を信じ、そして、裏切られたと思い、こんな姿になってしまった。
組織の方には、上手いこと誤魔化すために記録を提出しないといけなくて、たまに帰ってきてたのはそのため。
あまり帰って来なかったのは、年頃の女の子が何も知らない俺みたいな男と一緒に住むのは酷だと判断したから。
働かなくていいって言ったのは、君が向こうにも仕事があって、
ここに根付く必要はないって、思ってたから。
君なら分かってくれると、思ってたんだけど」
すごく切ない顔で、視線を落とす。
「うそ、つき」
戻ってきた声に、思ったことを載せれば、千景さんの目と合う。
「ひどいな、ロマンチックだとは思わない?」
「50/50、でしょ?」
「自分のことは鈍いくせにね。君は、案外ロマンチストじゃないらしい。ところで、どうする?今なら、あの日の君のお願いきいてあげるけど」
「おねがい?」