第13章 ※不断桜
「芽李、音にしなくていいから、どうしてそうなったか教えてくれ」
本当にわかんないの?
自分で言ってきたくせに。
そう思いつつ、
口を動かす。
「[千景さんが、言った。私は、担保だから、余計なことはするなって、…体のことは心配しなくてもお腹には、ちゃんとご飯入れてましたから]…か。
…まったく、君は本当にそそっかしいというか、何というか。
そんな顔して帰ったら向こうの人たち、すごく心配するんじゃないか?」
さっと、伸びてきた手が優しく私の頬に触る。
「こっちにきて、初めて泣けたんじゃない?」
涙の跡を拭う。
「あの日、聞いてなかったの?俺が肩叩いた時、うなづいただろ?」
ポケットから出した、小さな機械をコトッと差し出してきた千景さんに、私は首を傾げる。
「君が帰りたいって言うから、少し早めにアクションを起こしたんだけど」
「…ぇ」
「本当なら、もう少しじっくり時間を掛けたかったんだけど。はじめに言ったでしょ。君を解放してあげるって。まぁ、今回のは初手だから、もう少し協力してもらう必要があるけど」
何を言ってるか、よくわからなくて。
「録音しておいて、良かったよ」
カチッと千景さんがその機械のボタンを押すと、千景さんが帰って来なくなった日の、ことがフラッシュバックする。
【『わかったならいい。君は、能天気でも聞き分けのいい子らしいね。…っと、そろそろ時間だ。
ところで、やることが無いって君は言ってたけど、本当にそう?』
『君…ご飯ちゃんとたべてる?』
『働くも、なにも、まずはそっちをきちんとしてくれないかな?
君の叔父さんがお金を返せなかった時、君を市場にだすために健康状態が悪いと、採算合わなくなっちゃうから』
『…』
『………っと。こんな感じかな。もういいよ、芽李、記録は撮れたし。ここまですればあいつらも、満足なんじゃない?
俺はこれをネタに、君が帰れるよう算段をつける』
トントンと叩たくような音。
『2週間くらいかかるとは思うけど、その間君は、帰る準備をして置くんだ』】
そこで、録音が終わる。
俯かせていた視線をあげれば、千景さんの目と合う。
「もしかして、と思ったけど…本当に聞いてなかったのか?」
コクンとうなづくと、綺麗な顔が歪んだ。