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3月9日  【A3】

第13章 ※不断桜


 『なら、オレ三角探しする』
 『オレは、出来なかったデートしたいなぁ〜っ』
 『僕はみんなとお祭りにいきたいです!あぁっそれから、秋組の皆さんも』
 『シトロンだヨ!新作漫才するネ!綴!行くヨ!!』
 『え?今?!今じゃないだろ!!』
 『アンタらうるさい、俺とのカレーパン屋探し、いつ行くの?芽李』
 『芽李、俺の電話出なかった罪は重いから。帰ってきたら、絶対』

 ぷつっ…

 至さんの声が途切れて、画面を見ると真っ暗になっていた。

 …充電切れちゃった。
 絶対、何を言おうとしたんだろう。

 そうだ、充電器探さなきゃ。

 何処に置いたか、本当に思い出せない。
 キャリーケースの中、箪笥の中、結局見つけたところはベットの下で。
 なんでこんなところに?と思ったところで玄関から音がする。

 こわくなって、そのままベットの下に隠れる。

 どうか見つかりませんように。
 さながら、狼と7匹の子ヤギのよう。

 じっと目を瞑って潜む。

 不審者さん、すぐ帰ってください!!

 ギシギシと、床の軋む音。
 こっちに向かってきてる。

 「……何してるの?」

 その声にゆっくりと目を開ける。
 ゆっくりと、こちらを覗き込んだその人は見慣れないラフな服装をしている。

 緑色の髪がサラッと目の前で揺れた。
 腕が伸びてきてビクッと、思わず体が拒む。

 「猫かなんかのつもり?驚かせたのは悪かったけど、まさかこんなとこに逃げこむとは思わなかったな…ほら、君にいい知らせを持ってきたよ。いい加減出てきてくれないか」

 あの日と打って変わって、呆れと共に優しさが浮かんだ顔。
 あと、…ちょっと疲れてそう。

 ゆっくりと、這い出る。

 「っ、」

 ゆっくりと今の私と目があった千景さんの顔が、少しずつ歪んでいく。

 「ねぇ」

 カチッと上げられた眼鏡が、少しだけあの日みたいで怖い。

 「この約2週間とちょっとで、どうやったらそうなるの?」
 「…っれは、」

 音にならない咳が出る。
 さっき、電話をしたせいで少し無理をしちゃったみたい。

 「その声も、なに?」
 「ごめ…なさい、た…んぽ、…のに、」
 「…本当に言ってるのか?それともこの間の話、聞いてなかったのか?」

 何を言ってるんだ、この人は。
 聞いていたから、そう答えたのに。
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