第13章 ※不断桜
『なら、オレ三角探しする』
『オレは、出来なかったデートしたいなぁ〜っ』
『僕はみんなとお祭りにいきたいです!あぁっそれから、秋組の皆さんも』
『シトロンだヨ!新作漫才するネ!綴!行くヨ!!』
『え?今?!今じゃないだろ!!』
『アンタらうるさい、俺とのカレーパン屋探し、いつ行くの?芽李』
『芽李、俺の電話出なかった罪は重いから。帰ってきたら、絶対』
ぷつっ…
至さんの声が途切れて、画面を見ると真っ暗になっていた。
…充電切れちゃった。
絶対、何を言おうとしたんだろう。
そうだ、充電器探さなきゃ。
何処に置いたか、本当に思い出せない。
キャリーケースの中、箪笥の中、結局見つけたところはベットの下で。
なんでこんなところに?と思ったところで玄関から音がする。
こわくなって、そのままベットの下に隠れる。
どうか見つかりませんように。
さながら、狼と7匹の子ヤギのよう。
じっと目を瞑って潜む。
不審者さん、すぐ帰ってください!!
ギシギシと、床の軋む音。
こっちに向かってきてる。
「……何してるの?」
その声にゆっくりと目を開ける。
ゆっくりと、こちらを覗き込んだその人は見慣れないラフな服装をしている。
緑色の髪がサラッと目の前で揺れた。
腕が伸びてきてビクッと、思わず体が拒む。
「猫かなんかのつもり?驚かせたのは悪かったけど、まさかこんなとこに逃げこむとは思わなかったな…ほら、君にいい知らせを持ってきたよ。いい加減出てきてくれないか」
あの日と打って変わって、呆れと共に優しさが浮かんだ顔。
あと、…ちょっと疲れてそう。
ゆっくりと、這い出る。
「っ、」
ゆっくりと今の私と目があった千景さんの顔が、少しずつ歪んでいく。
「ねぇ」
カチッと上げられた眼鏡が、少しだけあの日みたいで怖い。
「この約2週間とちょっとで、どうやったらそうなるの?」
「…っれは、」
音にならない咳が出る。
さっき、電話をしたせいで少し無理をしちゃったみたい。
「その声も、なに?」
「ごめ…なさい、た…んぽ、…のに、」
「…本当に言ってるのか?それともこの間の話、聞いてなかったのか?」
何を言ってるんだ、この人は。
聞いていたから、そう答えたのに。