• テキストサイズ

3月9日  【A3】

第13章 ※不断桜


 『誰か咲也呼んで来い!』
 『アンタが行け!』

 相変わらず、騒がしい。

 『オレっちと、十座さんは、まだご挨拶したことないので!優先して話させてほしいっす!』
 『古参である春組が先。新参者は少し待って』

 あぁ、なんか、変わらない。

 『もしもし、芽李だよね?』
 「…」

 喉をしばらく使わなかったせいで、声が出ない。

 『何にも言わなくないっすか?』
 『声を出せない状況とか?』
 『え?!まさか誘拐?!』
 『けいさつ?!警察呼ばないと!!』
 『おい、お前ら変われ』

 プチッと切り替わった音声。

 『佐久間か?』

 低く落ち着いた声。
 …左京さんの声だ。

 「…あ"…ぃ、」

 苦労してだしたのに、久しぶりに聴いた自分の声は随分しゃがれている。

 『…!!一先ず、生きているんだな?!』
 「…ん、」
 『今の状況言えっつーのは、無理そうだな?』
 「ん…」
 『帰ってこられそうなのか?』
 「…な…ぃ、」
 『事件に巻き込まれたのか?』
 「ち………が、…ぅ」

 安堵のため息をついた、左京さん。

 『今すぐ迎えにいく。何処にいるんだ?可能なら住所を』
 「い…ぃ、…こ…ぇ、きき…たく、…った、け、」
 『…わかった。スピーカーにする。お前ら、なんか話せ』

 ザワザワしていたみんなの声に、また泣けてくる。
 本当に、久しぶりだった。

 みんなの声がする、

 はやく、帰りたい…。
 帰れない、

 もう聞けないかもしれないから、ちゃんと覚えておかないと。

 『ねぇちゃん!!』

 電話越しに聞こえて来たのは、凛とした咲の声。
 ザワザワしてた電話口が一斉にシーンとなった。

 『ねぇちゃん、芽李ねぇちゃん!!…いつ、いつ帰ってくるの?』
 「…さ………く、」
 『帰ってくるんだよね、"おれ"と約束したもんね?』

 縋るような声に、胸が締め付けられる。
 あぁ。
 …また、嘘になってしまう。

 「まっ……て、て」
 『うん、"おれ"ずっと待ってるから。待ってるからね、』
 「ん…」
 『咲也ばっかりずるい、オレも代わって。オレ、幸だけど、わかる?』
 「ゆ…き、く」
 『…そう。何やってんのか知らないけど、千秋楽見もしないで、戻ってきたらバツとして衣装がかりでコキ使ってやるんだからね』
 
 
/ 553ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp