第13章 ※不断桜
「君の叔父さんは、いかにもそういうことが苦手そうなのに、ここへ来てそういう"偶然“が重なりすぎてたと思わない?」
声のトーンとか、表情とか、初めてみる千景さんの姿にショート寸前だった。
「君も聞いたよね、偶然か必然か。俺は、最初に教えたはずだよ、必然だって」
逃げないとって、頭では警鐘が鳴っているのに、足が動かない。
「ひっ、」
「君は、俺の上司にとって借金の担保でしかない。君の叔父さんは、君と引き換えにお金を融資してもらってるんだ。それってどういうことか分かる?」
「…っ、」
自分の息が浅くなっていくのが分かる。
「浅はかすぎるよね、本当はわかってたんじゃないの?こっちに帰って来れば、こうなるってことくらい。
それなのに君はのこのこと帰ってきて、自分から担保になることを選んだんだよ。
本当に1ヶ月程度で帰れると思った?返すわけないでしょ、君はあの日、売られたんだよ」
はぁっ、はぁっ、はぁっ、
「本当はそういう場所に、すぐに出したっていいんだ。でも、俺がストップをかけている。それくらい俺はあいつに、気に入られてるんだよ。つまりは、俺の自由ってこと」
耳鳴りまでしてくる。
「君が怖いのは、他人に必要とされないこと。それから、忘れられちゃうこと、その辺かな?
俺のことを好きになりたい?言わなかったか、最初に。俺は俺のことを好きになるなって言ったはずだけど?」
「…もう、いいです、わかりました。…すみません」
「平等な結婚じゃないって、くれぐれも頭にいれといて」
「はい…」
「わかったならいい。君は、能天気でも聞き分けのいい子らしいね。…っと、そろそろ時間だ。
ところで、やることが無いって君は言ってたけど、本当にそう?」
「…」
「君、ご飯ちゃんとたべてる?」
「…、」
「働くも、なにも、まずはそっちをきちんとしてくれないかな?
君の叔父さんがお金を返せなかった時、君を市場にだすために健康状態が悪いと、採算合わなくなっちゃうから」
私の中で、プツンと音が切れて、
そこを境に、音が、聞こえなくなった。
「…」
ちがう、聞きたくなくて、心を塞いだ。
…千景さんの顔ももう見れない。
トントンと叩かれる方に、もうわかったと首だけ振った。
そんな私に、千景さんは、怪訝そうな顔をしていた。