第12章 ※長州緋桜
久しぶりの故郷は、あの日とは違って嫌味なほど晴れていた。
飛行機に乗るために切った携帯の電源は、帰れる日まで入れないと決めて。
空港から"あの家"までの道は、小さい頃、咲を追ったあの日と少し違って見える。
まぁ、あれから何年も経ってるんだから、それもそうだろう。
大人になった私は、走る以外の術を知っているのに。
どうしてまだ、縛られてるんだろう。
…乗り継いだバスが、あの家の最寄りまで着く。
足取りが重い。
行きたくない、
帰りたくない、
逃げたい、
そんな思いとは裏腹に、家の前まで着いてしまった。
息を呑んでチャイムを押す。
黒い鉄製の門が、
牢屋に見えて仕方ない。
2、3言交わすと、その向こうのドアが開くのが見える。
久しぶりに見た、親戚の顔は、私と目が合うと不気味なほど、ニヤリと歪んだ。
「ご無沙汰しております」
…できればもう、二度と会いたくなかった。