• テキストサイズ

3月9日  【A3】

第12章 ※長州緋桜


 久しぶりの故郷は、あの日とは違って嫌味なほど晴れていた。

 飛行機に乗るために切った携帯の電源は、帰れる日まで入れないと決めて。

 空港から"あの家"までの道は、小さい頃、咲を追ったあの日と少し違って見える。
 まぁ、あれから何年も経ってるんだから、それもそうだろう。

 大人になった私は、走る以外の術を知っているのに。
 どうしてまだ、縛られてるんだろう。

 …乗り継いだバスが、あの家の最寄りまで着く。

 足取りが重い。

 行きたくない、
 帰りたくない、
 逃げたい、

 そんな思いとは裏腹に、家の前まで着いてしまった。


 息を呑んでチャイムを押す。


 黒い鉄製の門が、
 牢屋に見えて仕方ない。


 2、3言交わすと、その向こうのドアが開くのが見える。


 久しぶりに見た、親戚の顔は、私と目が合うと不気味なほど、ニヤリと歪んだ。

 「ご無沙汰しております」























 …できればもう、二度と会いたくなかった。



 
/ 553ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp