第12章 ※長州緋桜
法事なんて、もう少し先だけど。
本当を少し織り交ぜれば、真実味を増す…なんて、汚い生き方を覚えてきたものだと、自分でも嫌になる。
「そっか、…法事…そっかぁ。仕方ないね」
少しだけしょんぼりしてくれた監督に、そんな顔してもらえるんだと、どこか他人事に思う。
「そういえば、ご実家って?」
「言ってなかったっけ?北海道の奥の方。
寒いけど、桜が綺麗に咲くんだよ」
思いを馳せながらいう。
こんなに早く、戻ることになるとは思わなかったけど。
「どのくらいで戻って来られそうなの?」
「"今回"は、そんなにかからないんじゃないかなとは、思うんだけど…遅くても、千秋楽までには戻りたいって思ってる。」
「そんなにかかるの?」
「んー……、親戚連中、少し頭が硬いから。難航は、するかも」
「そっかぁ、みんなも寂しがるから、早く帰ってきてね。いつ行くの?」
「明日の夜には、行こうと思うんだ。それで、うちの実家、電波も届かないくらい辺鄙なところだからさぁ、連絡…くれても多分届かないか、返信遅れちゃうと思うんだよね」
「えー!何か、あったら困る!」
「何にもないよ、私がいて困ることはあったとしても…なんてね。で、みんなには言っておくし、作り置きもしておくから、家事とかできなくて迷惑かけちゃうとおもうんだ。先に謝っておく、ごめんね」
手を少し動かして、片付けを進めながら言う。
「それからさ、」
「まだ何かあるの?!」
「みんなには、私から言うから。先に監督には、報告しなきゃって思って、今言ったんだけど。…みんなのこと、カンパニーのこと、私が言うことじゃないけど、よろしくお願いします」
ぺこっと頭を下げる。
「承りました」
そんな恭しいやりとりに、えへっと笑って、終わりにする。
「監督ー、あっち片付けましたよ。芽李さんも、いたんすね、」
「今いく!じゃあ、後で」
監督が立ち上がって、綴くんのほうにいく。
なんだか、とっても、
…みんなが遠くなっていく気がする。
でも、
これでいいんだ。
自分で決めたことだから。
少し早めに帰った寮で、軽く荷造りを済ませると、そのまま作り置きの準備を始める。
この間、臣くんに教えてもらった唐揚げも作ろう。
天馬くん頑張ってたし、ハンバーグも作ろう。