• テキストサイズ

3月9日  【A3】

第12章 ※長州緋桜


 法事なんて、もう少し先だけど。
 本当を少し織り交ぜれば、真実味を増す…なんて、汚い生き方を覚えてきたものだと、自分でも嫌になる。

 「そっか、…法事…そっかぁ。仕方ないね」

 少しだけしょんぼりしてくれた監督に、そんな顔してもらえるんだと、どこか他人事に思う。

 「そういえば、ご実家って?」
 「言ってなかったっけ?北海道の奥の方。
 寒いけど、桜が綺麗に咲くんだよ」

 思いを馳せながらいう。
 こんなに早く、戻ることになるとは思わなかったけど。

 「どのくらいで戻って来られそうなの?」
 「"今回"は、そんなにかからないんじゃないかなとは、思うんだけど…遅くても、千秋楽までには戻りたいって思ってる。」
 「そんなにかかるの?」
 「んー……、親戚連中、少し頭が硬いから。難航は、するかも」
 「そっかぁ、みんなも寂しがるから、早く帰ってきてね。いつ行くの?」
 「明日の夜には、行こうと思うんだ。それで、うちの実家、電波も届かないくらい辺鄙なところだからさぁ、連絡…くれても多分届かないか、返信遅れちゃうと思うんだよね」
 「えー!何か、あったら困る!」
 「何にもないよ、私がいて困ることはあったとしても…なんてね。で、みんなには言っておくし、作り置きもしておくから、家事とかできなくて迷惑かけちゃうとおもうんだ。先に謝っておく、ごめんね」

 手を少し動かして、片付けを進めながら言う。

 「それからさ、」
 「まだ何かあるの?!」
 「みんなには、私から言うから。先に監督には、報告しなきゃって思って、今言ったんだけど。…みんなのこと、カンパニーのこと、私が言うことじゃないけど、よろしくお願いします」

 ぺこっと頭を下げる。

 「承りました」

 そんな恭しいやりとりに、えへっと笑って、終わりにする。

 「監督ー、あっち片付けましたよ。芽李さんも、いたんすね、」
 「今いく!じゃあ、後で」

 監督が立ち上がって、綴くんのほうにいく。

 なんだか、とっても、

 …みんなが遠くなっていく気がする。

 でも、

 これでいいんだ。

 自分で決めたことだから。

 少し早めに帰った寮で、軽く荷造りを済ませると、そのまま作り置きの準備を始める。

 この間、臣くんに教えてもらった唐揚げも作ろう。
 天馬くん頑張ってたし、ハンバーグも作ろう。
/ 553ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp