第12章 ※長州緋桜
「期待はしてないけど、私頑張ってきた天馬君のことは1番に信用してるから。………って、変に熱くなってごめんね」
「………至さん、悪いな」
「は?天馬?」
ぎゅっと抱きしめられた時、フワッと香ったひまわりの匂い。
…いや、柑橘系だったかもしれない。
「今の言葉で、変な緊張が解けた気がする。オレ自身、ちゃんと練習してきたんだ。ちゃんと、わかってた。でも、見えなくなってたんだな……あいつらがいる、オレは1人じゃない。あの頃みたいに、1人で戦ってるわけじゃないんだ」
「うん」
ぽんぽんとあやすように、背中をささる。
こんなに大きくたって、まだ子供だ。
天馬君だって、夏組のみんなだって。
舞台に立つ不安も、わくわくもきっと大人より大きいはずだ。
「あー!天馬、めいにぎゅってしてる〜!ずるい〜!オレもめいとぎゅってする〜」
「は?!ちょっと、三角星人!?ポンコツも、抜け駆け禁止だから!」
「テンテンずるい〜」
「わぁ、みんな待ってくださいっ」
騒がしい声が聞こえて、距離ができると、恨めしそうにこちらを見ている至さん。
「うるさい奴らがきたな。…そろそろか」
「たのしんできて、天馬くん」
「ありがとう、芽李さん。いってくる」
「めい、オレもぎゅ〜」
「オレもオレも〜、むっくんも、ゆっきーも、合わせてぎゅ〜」
「やめてよ、暑苦しい」
「はは、でもゆき君とっても嬉しそう」
「うるさい、椋」
「みんな、楽しそうなとこわるいけど。そろそろ時間。」
至さんが時計を指していう。
「いくぞ、お前ら!」
陽だまりのような、夏組のみんなにもみくちゃにされ、そして嵐のようにさっていく。
「元気いっぱいだ」
「ハーレムじゃん」
「至さんもやりたかった?やっぱ学生組は天使だもんね」
「浮気者め。やっぱ、若い方がいいのね!」
ふん!
と、少し高めの声を出す至さんは、無理をしたせいか一つ咳をして、優しく笑った。
「天馬の表情、柔らかくなったな。あいつらの顔もいい顔してた」
「春組の、役者さんに太鼓判押されたら、みんなきっと本当に大丈夫なんだろうね」
「…芽李、お前もね。最近で1番いい顔してる。久しぶりにその顔みられた」
「…」
ふわっと、頭を撫でられる。