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3月9日  【A3】

第12章 ※長州緋桜


 「期待はしてないけど、私頑張ってきた天馬君のことは1番に信用してるから。………って、変に熱くなってごめんね」
 「………至さん、悪いな」
 「は?天馬?」

 ぎゅっと抱きしめられた時、フワッと香ったひまわりの匂い。
 …いや、柑橘系だったかもしれない。

 「今の言葉で、変な緊張が解けた気がする。オレ自身、ちゃんと練習してきたんだ。ちゃんと、わかってた。でも、見えなくなってたんだな……あいつらがいる、オレは1人じゃない。あの頃みたいに、1人で戦ってるわけじゃないんだ」
 「うん」

 ぽんぽんとあやすように、背中をささる。
 こんなに大きくたって、まだ子供だ。
 天馬君だって、夏組のみんなだって。
 舞台に立つ不安も、わくわくもきっと大人より大きいはずだ。

 「あー!天馬、めいにぎゅってしてる〜!ずるい〜!オレもめいとぎゅってする〜」
 「は?!ちょっと、三角星人!?ポンコツも、抜け駆け禁止だから!」
 「テンテンずるい〜」
 「わぁ、みんな待ってくださいっ」

 騒がしい声が聞こえて、距離ができると、恨めしそうにこちらを見ている至さん。

 「うるさい奴らがきたな。…そろそろか」
 「たのしんできて、天馬くん」
 「ありがとう、芽李さん。いってくる」
 「めい、オレもぎゅ〜」
 「オレもオレも〜、むっくんも、ゆっきーも、合わせてぎゅ〜」
 「やめてよ、暑苦しい」
 「はは、でもゆき君とっても嬉しそう」
 「うるさい、椋」

 「みんな、楽しそうなとこわるいけど。そろそろ時間。」

 至さんが時計を指していう。

 「いくぞ、お前ら!」

 陽だまりのような、夏組のみんなにもみくちゃにされ、そして嵐のようにさっていく。

 「元気いっぱいだ」
 「ハーレムじゃん」
 「至さんもやりたかった?やっぱ学生組は天使だもんね」
 「浮気者め。やっぱ、若い方がいいのね!」

 ふん!

 と、少し高めの声を出す至さんは、無理をしたせいか一つ咳をして、優しく笑った。

 「天馬の表情、柔らかくなったな。あいつらの顔もいい顔してた」
 「春組の、役者さんに太鼓判押されたら、みんなきっと本当に大丈夫なんだろうね」
 「…芽李、お前もね。最近で1番いい顔してる。久しぶりにその顔みられた」
 「…」

 ふわっと、頭を撫でられる。
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