第11章 染井吉野
「芽李さん、こっち切りましたよ。」
「ありがとう、じゃあこれ和えてくれる?」
綴君と2人でキッチンに立って、今咲はお風呂掃除してくれてる。
「咲也と仲直り、したんすね」
2人きりだから、そんなことを何気なく言ってきたのであろう綴君に、なんで返そうか。
「もともと、喧嘩なんてしてないよ。それに、咲って呼ばなかった私も悪かったし。
無意識に距離取ってたのかもなぁ。…だって、咲って可愛いじゃん?純粋で優しくて、春の風みたいなかんじで、清くて、尊くて。
元気で明るくて、本当桜みたいな、」
「急に饒舌。なら、本当に大丈夫なんだよな、」
「あれ、私信用なさすぎ?至さんにも、私信用ないって言われてるから。咲のこととガチャ運について」
「ふは、俺もドブしか引かないって至さんに言われてるっす」
「でもさ、案外そうでもないよね?」
「というと?」
「仲間ガチャは、最強だよ。支配人のこと助けようって思ったあの時に多分運使い果たしちゃったんだよ。
MANKAIカンパニーに関われたってだけで、私の人生捨てたもんじゃなかったって、きっと地球最後の日に思うんだよね」
「地球最後って…」
「この間、至さんにご紹介していただいた、アニメ見て、そういう内容で、私は胸が打たれてね。あれ脚本にして、みんなバージョンで見たいな、綴大先生」
「ちゃっかりしてる。まぁでも、生かせそうなら暇な時見てみます。」
料理の仕上げに取り掛かったころ、咲もお風呂掃除を終えて手伝いに来てくれた。
「咲、ありがとう。私の仕事なのにさ、」
「いえ!これくらいオレも手伝えます!」
「頼もしい。…みんな、そろそろ帰ってくるね」
「ですね」
ピンポーンと丁度良く帰ってきたのは、夏組じゃなくて春組の裏方班。
「夏組のみんなは?」
「んー、うん…」
そう答えたのは、1番にリビングに入ってきた至さん。
「ま、そうだよね」
そして、そのあと夏組もいつもの覇気がない状態で帰ってくる。
今、なんて声を掛けても私じゃ…。
「おかえり!ご飯もお風呂もできてるよ、それからなんと、冷凍庫にはアイスも入ってまーす!」
空回り、わかってる。
でも、私いつも通りにしかできない。
「おつかれ、ありがとねん」
「芽李さん、ありがとうございます!」