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3月9日  【A3】

第11章 染井吉野


 順調に迎えられると思った新生夏組の初公演の初日。

 やっぱりそんなに甘く無いってこと、思い知らされたのはその日の夕方。

 「え?天馬君が?」

 夕飯は、夏らしく冷やし中華にでもしようかと思っていた、仕事帰り。
 デザートは、スイカとパイナップルどっちがいいだろう。

 スーパーに寄ってアイスでも買おうかな。
 とにかく、今日は暑かった。

 そんな時電話をくれたのは、不安げな声の椋くん。

 「ごめん、ちょっと話が見えない。すぐ帰るから、帰ったらまた改めてお話聞かせて」


ーーーーーー
ーーー


 スーパーには寄らず、急いで帰って談話室のドアを開ける。

 「てんてん!?…じゃなかった、メイメイおかえりんご〜」
 「なんか、ごめんね?えっと」

 ガクガクしかじかでと、今日の出来事について詳しく聞かせて貰えば、夏組のみんながソワソワというかハラハラしている理由がわかった。

 天馬くんの事務所の方が来るなんて…

 最初こそいざこざしてたけど、今はもう天馬くんなしの夏組なんて考えたくもないのに。

 夏組のみんなだけじゃなく春組もカンパニーの一同揃って天馬くんの帰りを待つ。

 私は何かしないと落ち着かなくて、夕飯の支度をしようとキッチンへ立つ。

 「ねぇ、ヤバい見てこれ!」

 手元に集中していると、カズくんの声がきこえて顔を上げる。

 「何?」

 「テンテンのブログ!ずっと更新止まってたんだけどさ、今日更新された!」
 「タイトルが『劇団に入団しました』……?これって……!」 
 「MANKAIカンパニーのことと、公演のことが書いてあるね」
 「出演することは隠すって言ってたのに…」
 「公表しちゃえば、出るしかないって思ったんじゃね?ネットニュースでもトップにのってたし!」
 「てんま、頭いい〜」
 「でも、このことお父さんが知ったらーー」

 みんなの声は作業しながら聞いていた。
 嫌な想像ばかりが浮かんで、ずきんと胸がなった時ドアを騒々しく開けて入ってきたのは支配人。

 「突然、チケットの申し込み予約が殺到して、あっという間に完売しました!」

 がちゃんと皿と皿がぶつかる。
 壊れてないみたい、よかった。

 「完売…!?」

 そっか、天馬くんのネームバリューだ。
 千秋楽まで満席になっちゃうなんて、とんでもない…。

 
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