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3月9日  【A3】

第11章 染井吉野


 「他人以上の関係になれない?」
 「うん、…だってさ、いいよいいよって言ってくれたら、それは都合のいい楽な関係ではいられるかもしれないけど」

 かずくんが一瞬歪めた顔に、私も少し胸は痛んだ。

 「でも、そう言ってくれた相手が、自分の意見言えなくて、自分の見えないとこで辛い思いしてるなら、私そっちの方が嫌だな」
 「…うん」
 「意見を言う言わないって、その相手とどうなっていきたいかだよ。深いとこで繋がりたいなら、相手の意見聞いて自分の意見伝えてそうやって、向き合っていかないと。」
 「ん」
 「かずくんが、向き合いたい夏組のみんなは、」

 ピクッと眉が動く。
 …やっぱり当たりだ。

 「意見言ったくらいで見限ったりしないっていうのは…かずくんが1番わかってるでしょ」
 「…」
 「怖いなら、監督にも話してみたら?」
 「ん、」
 「…なーんて、年長者なんで偉そうなこと言ったけど、私も自分の意見言うのちょっと苦手な時あるから、そこは共感」

 戯けて言うと、釣られて笑った。

 「メイメイ、ありがとう」
 「髪、乾かしただけだよ」
 「メイメイは、いつもオレの弱いところも、認めてくれるじゃん。また、髪乾かしてくれる?」
 「うん。いいよ、さっきも言ったけどね」
 「そっか♪」

 よーしっと、立ち上がってじゃれつくように私を抱きしめてくる。

 「おっと」
 「充電完了!明日から頑張れそう!期待してて、にゅー、カズナリミヨシになるから!カントクちゃんにも相談してみる!」
 「うん」

 ぽんぽんとあやすように背中をさすれば、もう一度強く抱きしめられて、そのあとはパッと腕が離れた。

 「おやすみ、メイメイ」
 「お休み、カズくん」

 どうか、今日は、カズくんがいい夢を見られますように…。
 そっと背中を見送りながら願った。

 …私も早く寝よう。

 ベットの上に寝転がれば、案外すぐに眠気が襲ってくる。

 「ふぁあっ、」

 もうすぐに迫っている、新生夏組の初舞台に想いを馳せながら、今のところうまい具合で進んでるし、春組の時よりかはスムーズに行くだろうなんて、考えつつ寝返りをうった。

 
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