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3月9日  【A3】

第11章 染井吉野


 大きなこどもみたいだ。

 「綴くんでも召喚する?至さんの株下がると思うけど」
 「芽李のけち。俺のこと嫌いなの?」
 「大好きだけど?カンパニーのみんなのとこ。」
 「俺だけ1番って言って」
 「残念、私の1番は咲だもん」

 …だから、たまに苦しい。
 
 「帰って、シャワー浴びたら髪乾かしてあげる」

 そういうと、素直に腕が離れた。
 こんなことでいいのか。

 「夜食も作ってくれる?」
 「いっつも作ってあげてるじゃん、だから早く帰ろう?」

 肩が軽くなった。

 「それならよき」

 腕が離れたと思ったら、こんどは左手が塞がった。

 「芽李、やっぱり冗談じゃなく…他で男作るの辞めてね?もしもの時は、…俺で妥協してよ」

 冗談めいているのに、声は真剣で。

 「うーん、…至さんが整理整頓できるようになって、好き嫌いも無くなって、駄々っ子にならなくなったら、考えてあげてもいいよ」
 「むり、ハードル高すぎ」

 素直にうなづけずにそう返してしまったけど、
 本当は、この夜とっても嬉しかったの。

 咲とのわだかまりがなかったら、…
 おじさんとの契約が無かったら、よかったのに。

 まぁ、咲とのわだかまりは私のせいだけど…。

 「至さんは、物好きだね」
 「どうして?」
 「こんな私のこと、想ってくれる」
 「…芽李は、気付いてないかもしれないけど」
 「うん?」
 「カンパニーのみんなお前の虜だよ。想ってくれて、支えてくれて、ただ真っ直ぐに信じてくれる、それだけで頑張ろうって思える。独り占めしようとしてること、バレたらアイツらになんて言われるか」

 ぶるっと身を震わせて、そんな大袈裟な仕草にさえ、至さんの優しさが滲む。

 「ありがと、至さん」
 「…今日の夕飯、なにかな」
 「飲んできたのにたべるの?」
 「歩いたら、お腹すいたんだよ」
 「そっか……今日はカレーだよ。いづみちゃんが食事当番代わってくれたから。夏野菜カレーかな」
 「…………コンビニ寄ってくかー」
 「ピザあじのポテチその袋の中にあるんじゃないの?」
 「カレーで我慢するかぁ。美味いけど」

 至さんのおかげで、暗い夜道もあっという間に寮についちゃったな。

 電気が漏れる、私の大切な居場所。
 たとえ今が、間借りしてるに過ぎなくても…。
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