第11章 染井吉野
大きなこどもみたいだ。
「綴くんでも召喚する?至さんの株下がると思うけど」
「芽李のけち。俺のこと嫌いなの?」
「大好きだけど?カンパニーのみんなのとこ。」
「俺だけ1番って言って」
「残念、私の1番は咲だもん」
…だから、たまに苦しい。
「帰って、シャワー浴びたら髪乾かしてあげる」
そういうと、素直に腕が離れた。
こんなことでいいのか。
「夜食も作ってくれる?」
「いっつも作ってあげてるじゃん、だから早く帰ろう?」
肩が軽くなった。
「それならよき」
腕が離れたと思ったら、こんどは左手が塞がった。
「芽李、やっぱり冗談じゃなく…他で男作るの辞めてね?もしもの時は、…俺で妥協してよ」
冗談めいているのに、声は真剣で。
「うーん、…至さんが整理整頓できるようになって、好き嫌いも無くなって、駄々っ子にならなくなったら、考えてあげてもいいよ」
「むり、ハードル高すぎ」
素直にうなづけずにそう返してしまったけど、
本当は、この夜とっても嬉しかったの。
咲とのわだかまりがなかったら、…
おじさんとの契約が無かったら、よかったのに。
まぁ、咲とのわだかまりは私のせいだけど…。
「至さんは、物好きだね」
「どうして?」
「こんな私のこと、想ってくれる」
「…芽李は、気付いてないかもしれないけど」
「うん?」
「カンパニーのみんなお前の虜だよ。想ってくれて、支えてくれて、ただ真っ直ぐに信じてくれる、それだけで頑張ろうって思える。独り占めしようとしてること、バレたらアイツらになんて言われるか」
ぶるっと身を震わせて、そんな大袈裟な仕草にさえ、至さんの優しさが滲む。
「ありがと、至さん」
「…今日の夕飯、なにかな」
「飲んできたのにたべるの?」
「歩いたら、お腹すいたんだよ」
「そっか……今日はカレーだよ。いづみちゃんが食事当番代わってくれたから。夏野菜カレーかな」
「…………コンビニ寄ってくかー」
「ピザあじのポテチその袋の中にあるんじゃないの?」
「カレーで我慢するかぁ。美味いけど」
至さんのおかげで、暗い夜道もあっという間に寮についちゃったな。
電気が漏れる、私の大切な居場所。
たとえ今が、間借りしてるに過ぎなくても…。