第11章 染井吉野
「皿洗い、ありがとうな」
食後のコーヒーを淹れてくれた臣くんが、撮ってくれた写真を見せてくれる。
「どういたしまして、私こそ美味しいご飯ありがとう」
弟くんたちは宿題をすると部屋に行ってしまい、リビングには私たちだけになってしまった。
「写真、よく撮れてるだろ?」
「うん、この花の写真とか綺麗で」
「違うよ、こっちの被写体の芽李さんのほう」
「臣くん、撮り方上手だもん」
「モデルがいいんだよ、こんな表情なかなか撮れないよ」
「…そんなことないよ。たまたまだし」
「あの時何を考えてたんだ?」
「それは…」
「それから、もう一つ。
初めて会った日より、元気がないように見えるのはどうしてだ?」
息を飲む。
「悪い、どうしても気になって。だから、家に呼んだんだ。」
「どうして、」
「お腹いっぱいになったら、満たされるだろ?言いやすくなるかなって思ったんだ。」
「臣くん、」
「話して楽になることもあるんじゃないかと思うんだよ」
「どうしてそこまで?」
「…どうしてだろうな。わからないけど、芽李さんが辛そうな顔してるのが、見ていられないんだ。変だよな、まだそんなに長い付き合いでもないのに。
劇団のこと話す芽李さんは、楽しそうで聞いてるこっちがワクワクするんだ。」
臣くんの真っ直ぐな声に、ドキッとする。
「そんな姿を見ていたいって思うのと同時に、この写真を撮ったときのこの表情の理由がしりたい。今日、合間合間でこっちが苦しくなるくらいの顔をたまにしていた理由も。
不躾かもしれないが、さっき話してくれた弟のことで…なのか?」
「…」
「俺にも弟がいるから上の兄弟として、力になれるかもしれない」
「…臣くん、ありがとう。なんか、恥ずかしいな。私…、知り合ってまだ日が浅いのに、そんなにわかりやすいかな?」
俯いて答えてしまったのは、臣くんに全てを見透かされちゃいそうだから。
「どうだろうな」
「まだ、大丈夫なんだけどな………。でも、もしも助けてくれるなら、聞いてくれるなら、…コレは私が言うことではないんだろうけど、お願いがある」
「俺にできることなら」
「臣くんに、カンパニーに入ってほしい」
「え、」