第11章 染井吉野
「へぇ、じゃあ芽李さんは、劇団員寮に居るんだ」
「うん。臣くんの写真に惚れちゃってね、撮ってもらいたいって思ってたから、今回頼まれてくれて本当に嬉しかったんだぁ」
「臣にぃ、写真部冥利に尽きるね」
「そうだな」
MANKAIカンパニーも、男世帯だけど…やっぱり血のつながってる家族は違うな。
「あ、この唐揚げ美味しい」
「はは、いっぱい食べてくれ」
「だよな、俺も臣にぃの唐揚げすきなんだ。臣にぃ、なんでも美味しくつくれるんだ」
「そうなんだぁ。すごいなぁ、臣くん今度私にも教えて?みんなに作ってあげたい」
和気藹々と、食事を食べる。
臣くんのお父さんは残業らしくて、この日お会いすることは叶わなかったけど。
「もちろんだ」
でも、お陰でいい気分転換になった。
「食事が終わったら、例の写真渡すな?」
臣くん、優しくてお母さんみたいだ。
私にお母さんがいたのは遠い昔だけど…。
「うん、ありがとう。ごめんね、食事までいただいちゃって」
「俺がしたかっただけだから、気にするな。美味しそうに食べてくれて俺も嬉しい。それに、妹ができたみたいで嬉しいよ」
「じゃあ、俺たちの姉ぇちゃんだな。」
満面の笑みで言ってくる。
高校生かわいいな。
「えぇ?可愛い弟たちは嬉しいけど、私臣くんより歳上なんだけど」
「ははは、」
「カンパニーに入ってから家族増えちゃって困っちゃうよ。お兄ちゃんと弟がいっぱい」
「そうか。そういえば、芽李さんは兄弟とかいるのか?」
言ってなかったっけ…。
「居るよ、咲っていうの。とっても可愛い弟、私の1番大切な子。
大好きで何からも守ってあげたいって、思ってるんだけど…いっつも力不足で、傷つけてばっかりで」
「じゃあ、俺らとボクシングする?」
「岳、そういうことじゃないだろ」
「ふ、そうだね。考えとく」
「ほらな。開にぃ、そういうことだって」
あっかからんとする、伏見弟達になんとなく気分が明るくなった。
「ご馳走様!」
「ご馳走様でした!」
「ご馳走様、美味しかった」
「お粗末さま。片付けたら写真とってくるよ」
「あぁ、待って。片付けは私がやるよ、せめてそれくらいさせて?」
「…じゃあ、お願いしようかな。悪いな」