第11章 染井吉野
劇場を出て、ごゆっくりとまたもやニヤニヤとしながら、全力で手を振ってくれたいづみちゃんとは、反対方向に歩き出した私と臣くん。
いづみちゃんは、朝帰りでもいいからね!と、下世話なこと言ってたけど…。
ほんとにそんなんじゃないと思いながら、どうして私は臣くんと歩いてるんだろう。
「強引にごめんな、」
ははっと笑いながら、臣くんが言う。
「ううん、大丈夫。何食べる?って言っても、私そんなにお金持ってきてないからファミレスとかに行く?」
「それなら、よかったら俺の家に行きませんか?って言っても、家族がいるから安心してくれ」
と、話の流れで臣くんのお家に行くながれになってしまった。
…って、私ちょろくない?
「臣くんは、何人家族?」
「弟が二人いる」
「へぇ、どのくらい違うの?」
「3歳下と、5歳下。父親と3人家族なんだ。男ばかりで悪いな。」
「そうなんだ、臣くんとおんなじで優しい?」
「どうかな。まぁ、可愛い弟たちだ。ついたぞ、狭いが上がってくれ」
「お邪魔します」
男世帯と言っていたけど、意外とメルヘンというか、…。
「かわいいね、コレ」
「俺がつくったんだ」
「え、すごい。幸くんと話合うんじゃない?」
「そうかもな」
中も、綺麗だ。
「臣くんすごいね、」
「俺はすごくないよ。似たようなこと、芽李さんも寮でやってるんじゃないのか?」
「私なんてぜんぜん、」
ガチャガチャと、鍵のる開けるがする。
「ただいまー!」
「臣にぃ帰ってきてる!」
賑やかな声が聞こえてくる。
「弟たちが帰ってきたみたいだ」
「元気だね」
「あぁ」
キッチンに繋がるリビングのドアが開いて、顔を覗かせた少年達。
思ったよりガタイがいいと言うか、なんかこう、臣くんと初対面を思い出すな。
「見たことない靴だけど、お客さん?……って、臣にぃの彼女?!」
「まじかよ?!」
「違うよ、この人は写真部の」
「俺は開で、こっちが岳!よろしくお願いします!」
なんか、見た目の割に可愛いな。
「臣くんにお世話になってます、佐久間芽李です、よろしくね。開くん、岳くん。」
弟くん達とあいさつを済ませると、ランニングをしてきたと言う二人は臣くんに言われてシャワーを浴びに行った。