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3月9日  【A3】

第11章 染井吉野


 劇場を出て、ごゆっくりとまたもやニヤニヤとしながら、全力で手を振ってくれたいづみちゃんとは、反対方向に歩き出した私と臣くん。

 いづみちゃんは、朝帰りでもいいからね!と、下世話なこと言ってたけど…。

 ほんとにそんなんじゃないと思いながら、どうして私は臣くんと歩いてるんだろう。

 「強引にごめんな、」
  

 ははっと笑いながら、臣くんが言う。

 「ううん、大丈夫。何食べる?って言っても、私そんなにお金持ってきてないからファミレスとかに行く?」
 「それなら、よかったら俺の家に行きませんか?って言っても、家族がいるから安心してくれ」

 と、話の流れで臣くんのお家に行くながれになってしまった。

 …って、私ちょろくない?

 「臣くんは、何人家族?」
 「弟が二人いる」
 「へぇ、どのくらい違うの?」
 「3歳下と、5歳下。父親と3人家族なんだ。男ばかりで悪いな。」
 「そうなんだ、臣くんとおんなじで優しい?」
 「どうかな。まぁ、可愛い弟たちだ。ついたぞ、狭いが上がってくれ」
 「お邪魔します」

 男世帯と言っていたけど、意外とメルヘンというか、…。

 「かわいいね、コレ」
 「俺がつくったんだ」
 「え、すごい。幸くんと話合うんじゃない?」
 「そうかもな」

 中も、綺麗だ。

 「臣くんすごいね、」
 「俺はすごくないよ。似たようなこと、芽李さんも寮でやってるんじゃないのか?」
 「私なんてぜんぜん、」

 ガチャガチャと、鍵のる開けるがする。

 「ただいまー!」
 「臣にぃ帰ってきてる!」

 賑やかな声が聞こえてくる。

 「弟たちが帰ってきたみたいだ」
 「元気だね」
 「あぁ」

 キッチンに繋がるリビングのドアが開いて、顔を覗かせた少年達。
 思ったよりガタイがいいと言うか、なんかこう、臣くんと初対面を思い出すな。

 「見たことない靴だけど、お客さん?……って、臣にぃの彼女?!」
 「まじかよ?!」
 「違うよ、この人は写真部の」
 「俺は開で、こっちが岳!よろしくお願いします!」

 なんか、見た目の割に可愛いな。

 「臣くんにお世話になってます、佐久間芽李です、よろしくね。開くん、岳くん。」

 弟くん達とあいさつを済ませると、ランニングをしてきたと言う二人は臣くんに言われてシャワーを浴びに行った。
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