第11章 染井吉野
「お芝居に興味があるの?」
監督と目配せをする。
やっぱり、秋組にいいんじゃない?
「……ああ、はい。って言っても、正確には俺じゃないんですが」
なんだ…,
「友達が芝居やってるとか?」
「あ、いや……そうじゃないんですけど、でも、そんなもんですかね。とりあえず、今後の参考のために見とこうかなと……」
舞台の端から端まで歩いてみている。
「臣くんの舞台、みたいなぁ」
舞台の下でそういうと、私に近づいてしゃがむとにっこり笑った。
「はは、芽李さんが言うなら、そうなるかもしれないな。」
ぽんぽんと大きな手で頭をなでられる。
まって、コレは恥ずかしくない?
監督もきゃーッといいながら手で目を隠してるけど、間からちゃんとみてるの知ってるからね?
「って言うのはさておき。せっかくだから、これどうぞ。」
茶番は終わりですか?よかった。
持っていたボードに挟んでいたチケットを臣くんに差し出した監督。
「え?チケットですか……?」
それを受け取り、裏表と見ている。
「今日のお礼もかねて、千秋楽のチケット。よかったら、観にきてね」
「ありがとうございます」
「うちのカンパニーは、すっごいから!絶対臣くんも見たら、大好きになるよ!役者はもちろん、綴くんの脚本も監督の演出も、幸くんの衣装は、さっき見たか…かずくんのパンフとかも、色々ほんとに素晴らしくてね!」
「こらこら、芽李ちゃん、臣くんびっくりしてるから」
確かに、びっくりしてる。
だって、ほんとに好きなんだもん。
「はは、構いませんよ。…あぁ、そうだ。千秋楽を観る前に色々お聞きしたいので、この後、ご飯でも行きませんか?」
「え?」
「きゃーっ、いいじゃん行ってきなよ!」
「監督も一緒にどうですか?
それに、芽李さんには、この間の写真現像できたので、お見せしたくて。」
ニヤニヤしながら、私の肩をバシバシと叩きつつ
「いいっていいって、私よりも芽李ちゃんをよろしくお願いします!」
監督何か勘違いしてない?
「でも、」
「今日はカレーにするからさ、たまに羽を伸ばしてしてきたらいいよ。」
こっちは任せてと、グーサイン。
だから、監督そんなんじゃないってば。