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3月9日  【A3】

第11章 染井吉野


 「お芝居に興味があるの?」

 監督と目配せをする。
 やっぱり、秋組にいいんじゃない?

 「……ああ、はい。って言っても、正確には俺じゃないんですが」

 なんだ…,

 「友達が芝居やってるとか?」
 「あ、いや……そうじゃないんですけど、でも、そんなもんですかね。とりあえず、今後の参考のために見とこうかなと……」

 舞台の端から端まで歩いてみている。

 「臣くんの舞台、みたいなぁ」

 舞台の下でそういうと、私に近づいてしゃがむとにっこり笑った。

 「はは、芽李さんが言うなら、そうなるかもしれないな。」

 ぽんぽんと大きな手で頭をなでられる。

 まって、コレは恥ずかしくない?

 監督もきゃーッといいながら手で目を隠してるけど、間からちゃんとみてるの知ってるからね?

 「って言うのはさておき。せっかくだから、これどうぞ。」

 茶番は終わりですか?よかった。
 持っていたボードに挟んでいたチケットを臣くんに差し出した監督。

 「え?チケットですか……?」

 それを受け取り、裏表と見ている。

 「今日のお礼もかねて、千秋楽のチケット。よかったら、観にきてね」
 「ありがとうございます」
 「うちのカンパニーは、すっごいから!絶対臣くんも見たら、大好きになるよ!役者はもちろん、綴くんの脚本も監督の演出も、幸くんの衣装は、さっき見たか…かずくんのパンフとかも、色々ほんとに素晴らしくてね!」
 「こらこら、芽李ちゃん、臣くんびっくりしてるから」
 
 確かに、びっくりしてる。
 だって、ほんとに好きなんだもん。

 「はは、構いませんよ。…あぁ、そうだ。千秋楽を観る前に色々お聞きしたいので、この後、ご飯でも行きませんか?」
 「え?」
 「きゃーっ、いいじゃん行ってきなよ!」
 「監督も一緒にどうですか?
 それに、芽李さんには、この間の写真現像できたので、お見せしたくて。」

 ニヤニヤしながら、私の肩をバシバシと叩きつつ

 「いいっていいって、私よりも芽李ちゃんをよろしくお願いします!」

 監督何か勘違いしてない?

 「でも、」
 「今日はカレーにするからさ、たまに羽を伸ばしてしてきたらいいよ。」

 こっちは任せてと、グーサイン。
 だから、監督そんなんじゃないってば。


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