第11章 染井吉野
「…ども。」
「よろしくね!」
支配人に連れて来られるやいなや、幸くんは目利きをするようにみている。
「大学生っぽいし、プロじゃ無いよね。なんか若いけど、大丈夫なの」
「臣くんの写真、一度見せてもらったけど優しくていい写真撮るんだよ」
私がいうとまたジト目をされる。
「中学生で衣装やってるお前が言うな!」
そんな幸くんに、天馬くんがつっこんでる。
「はは、確かにプロじゃないよ。
大学の写真部で、綴に頼まれたんだ。
それから、芽李さんにも。
でも、ちゃんと仕事はするからさ。」
「ふーん。」
腑に落ちないというような声を出しつつ、腕組みをしてる。
「綴くんの友達だったんだ」
「世界は狭いね」
「そうだね」
そんなやりとりを優しい目で見ながら、臣くんが言う。
「それじゃ、まずは全体写真から撮ろうか」
ワクワクしちゃうな、どんなふうにみんなが映るんだろう。
バインダーを真剣に見つめて、一人一人と向き合ってる。
…カメラマンもかっこいいなぁ。
「ねぇねぇ、」
「ん?」
臣くんたちを見ていると、隣にきたいづみちゃんがこっそり耳打ちしてきた。
「臣くん、秋組にどうおもう?」
"たった数時間だけど、みんなとのやりとりも見ていいんじゃないかなって"
そう続けたいづみちゃんに対して大きく頷く。
「絶対いいと思う!もし、彼が興味があればだけど。」
「そうだよね」
満足げに笑った彼女に、私も釣られて笑う。
「監督のスカウトとしての見る目は、信頼と実績の賜物だからなぁ」
「でしょ!」
なんて話しているうちに、あっという間にみんなの撮影が終わったらしい。