第10章 大島桜
「ところで、何話してたんだ?」
「公演終わったら、お出かけしようって話。」
「そういえば、みんな稽古は?」
「今日は夜の稽古だけだ。」
答えてくれた天馬くんにそれとなく返事をする。
「そっか…」
「あぁ、そうだ、お前ら言ったのか?」
天馬くんの問いかけに、首を傾げた4人。
「なんだよ、まだなのかよ。芽李さん、明日空いてるか?」
「うん、」
そっか!と思いついたように、つづけたのはカズくん。
「ゆっきーの、激マブ衣装できたから、フォトシューティングするんだよねんっ」
「アンタも付き合いなよね。」
「うん、分かった。」
「芽李さん?」
「うん?なに?」
「いや、なんでも…」
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そして、その日の夜。
寮のチャイムが鳴ったのは、春組のみんなは部屋に、夏組のみんなと監督は稽古に向かった後。
「邪魔するぞ」
もうすっかり見慣れた金髪の髪に、真っ黒なスーツを着た彼。
「こんばんわ、左京さん。」
「あぁ。」
ぽんぽんと私の頭を何度か撫でて、目を細めた。
それがどんな意味を持つのか、私には分からないけど。
そっと差し出したスリッパに、足を入れた左京さん。
「少し疲れてます?」
「あぁ?」
「いや、なんでも。どうしたんですか、今日は。」
「夏組公演の進捗をな。」
「ちょうど、稽古してますよ。」
「あぁ、そうだろうと思ってな。」
「どうぞごゆっくり、コーヒー淹れときますね。」
「悪いな。」
左京さんは手慣れたように稽古場へ向かって、私は談話室へと戻る。
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しばらくして、談話室に入ってきたのは残業を終えた至さん。
「ただいま。誰か、お客さん?」
「至さん、おかえりなさい。うん、ちょっとね。」
「そう。」
「お風呂と、ご飯どっちにします?」
「あー、職場のやつとご飯済ませてきたんだよね。夏組は稽古中?」
「そうですね、」
「そっか、なら、被らないうちにお風呂に入ろうかな。」
「わかりました。」
今までと変わらない会話。
朝とは真逆。
至さんのスリッパを鳴らす音に私は密かにため息を吐いた。
ー…ガチャッ
また、談話室の扉が開く。
「左京さん、もうお帰りですか?」
「あぁ、」