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3月9日  【A3】

第10章 大島桜


 「…」
 「一緒だなって思ったの、

 だから、

 カンパニーを建て直したら、

 もし会えなくても誰かの夢を手伝ったっていう事が、

 探せなかった時の、
 見つからなかった時の免罪符にはなるかなって。

 …みんなには、内緒ね。」

 すっと、手を離す。

 自分でも、これが嘘なのか本当なのかもうよく分からない。

 「…俺らのこと、好き?」

 嫌いって、言ったらもう何も聞いてこない?

 「そんなの、…あたりまえじゃん。
 大好きだよ、どうしようもないくらい、春組も夏組も大好きだよ。」
 「そっか、」

 大好きって言うだけで、胸が潰れそうなくらい悲しくて寂しくてあったかくて、切ない。

 「なら、今は、それだけでいい。」

 フワッとすみれの香りがして、ぎゅっと抱きしめられる。

 それは一瞬のことだったけど、真澄くんが見たことない顔で笑ったから、

 なんだかやっぱり胸が苦しくなった。

 「アンタは思ってなくても、俺は家族だって思ってるから。だから、今日のことは誰にも言わない。
 俺の中にとっておく。」
 「うん?」

 なんで清々しく笑うのか、私にはやっぱり分からない。

 「カレーパン、買って帰ろ。監督が待ってるから」
 「そうだね、」





ーーーーー
ーーー




 カレーパンを買うのに入ったお店は、閉店間際だからかもうだいぶ商品も少なくなっていた。

 「いい匂いだね。」
 「うん。監督のカレーパン…あ、あった。」

 商品棚に並んだカレーパンをトングでお盆に乗せて、満足そうな真澄くん。

 「3つ買うの?」

 最後に残っていた3つだった。

 「うん」
 「そっか、」
 「アンタも何か買う?」
 「ううん、」

 今食べてもきっと…。

 「そう。なら、俺会計してくる。」
 「うん、外で待ってるね。」

 浮かんだ気持ちを消すように、口角をあげた。

 チリンチリンと鈴を鳴らして外に出れば、あたりはだんだんと暮れ始めていた。

 それでもやっぱり夏が近いから、空は薄明るさを保ってる。

 「ねぇ」

 一番星を見つけようと空に視線を向けたけど、もうとっくに何番星くらいかまで浮かんでいて。
 なんだ、残念。
 と、思っていたところに真澄くんが会計を終えて出てきた。

 「ん?」
 「アンタが教えてくれたから、」
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