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3月9日  【A3】

第10章 大島桜


 「送ってくれてありがとう、万里くん。またいつか会えたら」
 「待てよ、」
 「ん?」

 最寄りの駅に着いて、ここでお別れと思って胸を撫で下ろした時、ぐいっと引き止められた腕。

 万里くんは、綺麗な顔をしているけど、やっぱり男の子だった。

 「ちょっと痛いかな」
 「え、っとゴメンな!」
 「大丈夫だよ、どうしたの?」
 「連絡先」

 彼の私を掴んでいた手が離れて、そのままポケットに向かう。

 「あー…んー、次会ったらいーよ。教えてあげる。」

 その手を見つめながら言った。

 「は?なんでだよ、」
 「だって、もう会わないかもしれない人と、連絡先交換しても意味なくない?」

 視線を動かして、彼の目を捕らえて言えば少し固まってしまった。

 「…そーかよ。」
 「じゃあ、今度こそ。」
 「なぁ、」
 「…なに?」
 「芽李さんの、ツレってなんて名前?」
 「は?」
 「俺と同じ花学なんだろ?」
 「あぁ………んー、言ってもわかんないよ。君と多分タイプも学年も違うから。」

 咲を思い浮かべて言う。

 「どっちもいい子には代わりないけど…」
 「いい子って、…喧嘩するけどな。」
 「お店手伝ってくれたり、迷子になったとこ助けてくれたり、それに、今日は傷できてないでしょ。」

 この間の傷の場所に、優しく触れてみる。

 「ほらね。もう喧嘩しちゃダメだよ?」
 「…っ、約束はできねぇかも。勝ちてぇ奴がいるから、」
 「ふーん、ライバル君がいるんだ?」
 「まぁ、」
 「拳じゃなくて違うので勝負すればいいのに」
 「例えば?」
 「演技とか?」
 「は?」
 「ん?」
 「なんでだよ。」
 「あー…今、私劇団に仮住まいしてて、ついね。万里くん綺麗な顔してるし、背も高いし、堂々としてるから、舞台映えしそうだなって思って。」

 思ったままに言うと、ボンっと顔が真っ赤になった。

 「…ありえねぇ」
 「何が?」
 「んな恥ずかしいこと、堂々と言うとか…アンタ怖ぇな。」
 「そうかな、思ったことそのまま言っただけだから。」

 またじっと見つめれば、ふっと目を逸らされた。

 「ぜってぇ次会ったら、連絡先交換させてやる。」
 「怪我しないことも条件ね。」
 「上等」
 「気をつけて帰ってね。」
 「アンタこそ、迷子にならねぇようにな。」
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