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3月9日  【A3】

第10章 大島桜


 「…」
 「なに?」
 「至さん多食らいじゃないのに、朝食の前に食べても大丈夫なのかなって思って。」

 トスッと頭にチョップが決められる。

 「いたい」
 「俺だって、食べ盛りな高校生男子とまでは行かないけど、それなりに食べれるっつーの。」
 「へぇ、意外…あ、じゃあ私これ食べよーっと。いただきます…」


 少しだけ小皿にでとって、むぐっと一口入れる。
 …あれ?


 「うまいよ、コレ。あとコレも。」
 「…そう?」


 たまたまかと、思い直してまた違うのを口に入れる。

 シャキシャキとした食感、


 「やっぱ、芽李の料理うまいよ。」


 フワッとした食感、


 「まぁね、みんなのこと思って作ってるから!」


 また、切れた…。

 初めはただの違和感。
 それだけ、


 「駄目だ、箸止まらなくなる。アイツら起こしてくる。」


 ほんと、珍しいこともあるもんだ。

 至さんいつもは起こされる側なのに…、

 そう思いながら背中を見送った後、至さんが食べた他の品にも一口、手をつける。

 おかしいな。

 また一口、至さんが食べたものと同じものを口に入れる。


 「あれ…」


 口の中に残る食感?

 コレは?と、今度は香り付けに入れた鷹の爪を少し噛む。

 ピリッと感じる味覚に少しだけあんしんする。
 急激に速くなった心臓が、また落ち着きを取り戻す。

 …だけど、気をつけないと。

 きっと、みんなとは違うから。


ーーーーーー
ーーー



 至さんがみんなを引き連れて、ゾロゾロと談話室に入ってくる。

 「おはよー、みんな。」

 真澄くんは眠そう、綴くんも目を擦ってる。
 シトロンくんはいつも通り?
 咲は…

 「おはよーだヨ!」

 そうだ、昨日のこと謝らないと。

 「みんな昨日はごめん、お詫びに朝ごはんは腕によりをかけたから!」

 料理も笑顔も、上手くできた気がする。

 キョトンとしたシトロンくんと至さんを除いた3人にまたニッコリと笑う。

 「ほら、真澄くんも綴くんも、咲も、座って。」

 パァッと花が開くように笑った咲に、綴くんも真澄くんも安心したように笑った。

 「はい!」

 そう、…上手くできた。

 「よし、じゃあ。みんな、いっぱい食べて今日も頑張ってね。私、ジャグ置いてくるから。」

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