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3月9日  【A3】

第10章 大島桜


 パチンとウインクをして、バタバタと出ていったカズくんにみんなが続く。

 朝ごはんの用意がおわったら、朝練にも顔を出さないと。

 休憩までには麦茶持ってかないと…

 そう言えば忘れてたと、ジャグに麦茶のパックを入れてお湯で出したあと、水で薄めて氷をいれる。

 「あとでもってこ、」

 これ、こんなに重かったっけ?
 …まぁ、いっか。









ーーー
ーー







 冷蔵庫の食材が、ほぼ無くなった。

 代わりにできた料理たちは、今日の夜まで持ちそうなくらいの品数になってしまった。

 「わぉ、ずいぶんはりきったね。」

 後ろから聞こえてきた声に振り向けば、スーツに身を包んだ至さん。

 「おはようございます、至さん!」

 振り向くまでに、口角を上げて元気よく挨拶をする。

 …いつもの私、こんな感じ?

 「夏組と春組への愛の喝ですよ。寮母なんで、私!いっぱいたべてもらわないと」

 じと目で私を探るような顔をする至さん。

 「本当は?」

 その目にも、言葉にも何も感じない。

 「…食材が中途半端にあまってて、」

 どうしてそんな目で見るの?
 …私、おかしい?

 「…なら、バイキング方式にしようと思ったら止まらなくなっちゃって。今日、ちょうどスーパーで特売日だしいっかな?って。」

 …まただ、また切れた。

 「…」
 「…?」

 至さんの目、綺麗だな、まつ毛長い。

 「それならいいけど。あ、それより昨日のピザ、美味しかったよ。」
 「あぁ、でしょ?自分でも、そう思ってました。今日のご飯も自信作…って、味見してなかった。」


 そうだ、…いつもの私はちゃんと味見してる。


 「え?」


 至さんの顔が歪む。

 どうして私たった少しの会話でこんな表情させちゃうんだろう?


 「…」
 「またピザ作りますね!」


 ピザはいつもの作り方だったから、見た目で判断でもいいけど、さすがにこれはいつものレパートリーじゃないもんね。

 味見しないと。

 「至さんもする?って、朝ごはんになっちゃいますよね。」
 「いや、みんなが起きてくるまで時間あるし、少しだけ貰う」
 
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