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3月9日  【A3】

第9章 雛菊桜


 しょぼんとしていると、先程まで何か考える仕草をしていた雄三さんが声を上げた。

 「お前、三角って名前なのか、珍しいな。」

 たしかに、あんまり聞かないかも。

 「オレは、斑鳩三角だよ〜」

 斑鳩っていう苗字も…というか、みんな割と珍しい苗字してるよね。
 芸名向きっていうか…。

 「…イカルガ?…まさかな」
 「どうかしましたか?」
 「いや、何でもない」

 何でもない?
 知り合いに同じような苗字の人がいるのかな…。


ーーーー
ーー

 「今日の稽古については以上。他に何かあるか?」

 ピザ生地切らしておかなくてよかった。

 みんなの声を聞きながら至さんに頼まれてたピザと、夏組のみんなへの差し入れを作る。
 と言っても簡単なものだけど。

 ここにきてから、料理の幅もだいぶ広がった気がする。

 「はい」

 幸くんのはっきりとした声が聞こえる。

 「なんだ?」
 「衣装、ポンコツ役者の分だけできた。」

 うわ、すっっっごくみてみたい!

 盗み聞きしながら、作るスピードが上がる。

 「いい加減、そのあだ名やめろ。」
 「裾合わせするから着てみて」
 「って、これ…」
 「幸くんが作ったの?!」

 驚くことなかれ、幸くんは天才なんだよ!!

 「きらきらきれ〜」

 見たい、見たすぎる。でも、ここをこうして…………
 よし、あとは焼くだけ!

 レンジのタイマーをセットする。

 「すげー!かっけー!実物見ると、クオリティやべぇよ、ゆっきー!」

 私も見たい!ぜひ!

 「すごいな……」

 でしょう?!天馬くん!!
 …って、まって夏組って天才の集まりなのか?

 「うーん、まだまだ調整が必要だ」

 鮮やかな紺に映える金の装飾。
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