第9章 雛菊桜
ホッと息をついたのは私だけじゃないけど、
「でも、まっっったく笑えねぇ。コメディ劇としては致命的だな」
「は?」
次の言葉でやっぱりそんな甘いものじゃないんだと、芝居の奥深さを知る。
「特に主役のアリババ。笑いってもんをまったくわかってねぇ。」
天馬くんでさえ、この評価なんだ。
「……どう言う意味だ?」
「間、だよ。間。クソ真面目すぎんのか、経験のなさか、お前の間はドラマ寄りだ。」
たしかに、舞台の空気感ではなかった…かも?
「間、か……」
「漫才でも見て研究しろ。」
「わかった」
おすすめの漫才、教えてあげよう。
間の取り方ならシトロンくんとか綴くんの漫才も面白いし、勉強になるかもしれない。
…っていうのは、ちょっとカンパニー愛強すぎ?
「次シェヘラザード。細部が甘い。準主役の自覚を持て。アリババとつりあってない」
細部ってどういうことだろう、
「……ポンコツ役者みたいなこと言うし。」
あぁ、たしかに言ってる。
すごいな、やっぱり天馬くんってプロなんだなぁ、って改めて思うことじゃないけど。
「その次、アラジン。役の解釈が甘い。ヘラヘラこなすだけで
何とかなると思うなよ。」
役の解釈…
ふーん、…へらへらかぁ。かずくんは、やっぱり器用なんだろうな。
「やべ〜!テンテン以上にきびし〜!」
立ち直りも早いし…
「シンドバッド」
椋くん小動物みたいになってる。
ライオンに見つかったうさぎみたい。
「は、はい!」
「動きも声も小さい。他の奴らと比較して悪目立ちしてる」
「す、すみません。やっぱりボクはチビでマメな米粒なんですね」
明日豆ご飯に…いや、天津飯にしよう。
「後半悪口じゃないし」
「お米〜?おにぎりおいしいよ〜」
「豆もおいしいじゃん!むっくん、元気出せ!」
幸くんのツッコミ、舞台で生きそう。
かずくんも三角くんも優しいなぁ。
「最後に魔神。悪くねぇが、もちっと場をしめる役割もこなせ。」
「ふ〜ん」
三角くん、何か思うことがあるのかな?
「全員、まだまだ客の前に出るには程遠いレベルだ。初日まで何とかしねぇと恥かくぞ」
そっか、…。