第9章 雛菊桜
「さてと、こんなもんかな。」
昼間の稽古で疲れたのか、天馬くんに聞いたいざこざのせいか、本当に少しだけ疲れた様子をみせたみんなに、片付けは私に任せてと言って見送ったのは今から数分前のこと。
若いとは言え、私の手前ああして元気に振る舞ってくれるのは優しいけど少し寂しい。
まぁ、けど元気がなさすぎたら心配になるって言う…矛盾なんだけども。
ーぱたん。
明日の朝食の用意を済ませ、冷蔵庫の扉を閉める。
「芽李ちゃん、」
「いづみちゃん、おつかれさま。…呑む?」
「んー、ノンアルにしておこうかな。」
「そう言うと思って、結構買ってきたよ。ふふ。これとかおすすめ。」
「さすが、わー!ありがとう。」
「どう、稽古の進捗は。」
「まずまずかな。」
そう言いつつ、少しだけ曇った表情のいづみちゃんと、先程の天馬くんやみんなの姿を思い浮かべる。
「まぁ、まだ若いからね。多少のギクシャクはしょうがない」
「そーだよね」
「でも、団結したらどんな化学反応が起きるのか楽しみだな」
「うん。まぁ、天馬くんもたんじゅ…素直な子だから。」
…単純って言おうとしたのかな。
「確かにね、………演劇のことは全くのど素人ですけど。それ以外の面では、いづみちゃんのこと含めて全力でサポートさせていただく所存なので。」
「うん。ありがとう。あ、春組のみんなはどう?」
「真澄くんが、いづみちゃん不足って発作起きてて大変だったよ、」
「ふは、」
「大きなリュックサック、至さんに強請ってたもの。」
「何用で?」
「監督を持ち運ぶって」
「ひょえっ」
あははと、乾いた笑いを浮かべた彼女にオフレコにした方が良かったかと少しだけ思いつつ、話を続ける。
「でも、あんなに一途なの見てる分には可愛いよね。そこから、エチュードが始まって、みんなの一部にちゃんと芝居があるんだなって、最初を思い出してさ。初めなら考えられなかっただろうなって。
夏組も、春に負けないくらい仲良くなってさ、一生大切な絆を結んでくれて、お芝居も大好きになってくれたら私達の勝ちだね。」
「何との勝負?」
「左京さん。」
少し考え込んだ顔をした後に、ニッコリと笑ったいづみちゃん。
「その勝負、こっちが優勢かもね。」