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3月9日  【A3】

第9章 雛菊桜


 しおらしい態度のくせに、横暴なんだよなぁ。

 「はいはい。どうしたの、てんまくんは。」

 荷物を運び終えて、とりあえず座る。
 ぽんぽんと隣に座るよう促せば、少々渋りながらも座った。

 「…」
 「稽古は?」
 「…」
 「まぁ、天馬くんいつも真面目に頑張ってるからね。ちょっとくらい休憩が必要かな。」
 「酷いこと、言ったかも…しれない」

 ポツリポツリと吐き出した気持ちは、多分今まで知らなかった気持ちなんだと思う。
 
 「そっか。」
 「…八つ当たりして、…悪かったな」
 「ま、天馬くんのおねーちゃんだしね?」
 「…」

 茶化すように言うと、ドアが開いた。

ーがちゃっ

 「あ!ここにいたんだ!」
 「いづみちゃん、ごめんね。挨拶もしないで。」
 「んーん、いーのいーの。」

 いづみちゃんの手にあったお皿にはカレーが盛られていて、こんな時にもカレーなのかと思わずクスッとしてしまった。

 「じゃあ、中のみんなにも挨拶してこないとな」
 「みんな喜ぶと思うよ。」
 「そーかな、まぁ行ってくる。じゃあね、天馬くん中で待ってるから」
 「ん。」

 ドアの中から香って来たスパイスの匂いと、あったかい電気の色。
 それから、夏組の子たちの声。

 リビングのドアを開けると、みんなが一斉に振り向く。

 「アンタ、どこで道草してきたの。」

 幸くんの辛辣な第一声に、彼らしいと思う。

 「ちょっとそこまで。」
 「三角探してきたぁ?」
 「三角、探してないけど持って来たよ。じゃーん、スイカのアイス。」
 「わぁー!種の部分チョコで美味しいですよね」
 「やべぇー!久々に見たー!なつかしー!一緒に写真撮って、インステにあげちゃおー!」

 少し元気がないように見受けられるものの、元気いっぱいでいてくれるのは、きっと彼らなりの気遣いなんだろうな。

 「ふふ。解けないうちに食べちゃって。残りの分は冷凍庫に入れとくから」
 「はーい!」

 それぞれがアイスを片手に、私が持って来たものを整理するのを手伝ってくれる。

 「あ、ねぇ。これ何?」
 「それは監督にって、真澄くんが」
 「うげー、触らんどこ。」
 「でー、こっちが綴くんで、こっちがー…」
 「春組の奴らもたせすぎじゃない?」
 「うわー、亀吉饅頭だぁ。とりあえずインステに上げるしかじゃーん」
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