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3月9日  【A3】

第9章 雛菊桜


 「本当にしてないですって、私が聞きたいくらいで」
 「へぇ、…」
 「信用してくださいって」
 「咲也はうちの座長で、一緒にお芝居もしたしね。なんと言っても俺の子供だから。」

 意地の悪い言葉にむすーっとすれば、ははっと笑ってくる。

 「なんてね、芽李も俺のかわいー妻だもんね。」
 「シトロンくんに言い付けます。浮気者」
 「ちぇ、乗せられてくれないか。」
 「至さんの車には乗せてもらってますけど、口車には乗りませんよー。」
 「今すぐ降ろしてもいーんだぞ。」
 「嘘です、至さん。運転ありがとうございます。」
 「…まぁ、咲也のことは綴あたりがなんとかしてくれると思うし、俺たちはドライブデート楽しもうね?」

 赤信号をいいことにこっちを向いて、ニコって笑う。

 「デートではないです」
 「連れないなー。しゃーない、道中長いし、ドライブスルーでもするか」
 「デートでいいです、期間限定のアレ食べたいです!」
 「まったく、ゲンキンな奴だな。りょーかい。CMのやつね。」

 夏組の合宿所まではまだ少しかかる。
 至さんの車では、聴きなれたゲーム音楽が流れていた。






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 「とうちゃーく。」
 「ありがとうございました。…顔出してく?」
 「いや、ヘーキ。みんなによろしく言っておいてよ、こっちのことは綴がなんとかするから安心して、稽古手伝ってあげて」
 「綴くん任せほどほどにね」
 「…ふっ」

 不敵な笑みと私を宿の前に降ろし、ブレーキランプを5回点滅させて…って、それ車じゃなくてバイクだし、そのネタが古いかもしれない。

 「さてと………ひぃっ!?」

 ふと、横を見ると暗闇で動いた影。

 驚いてみれば、しょんぼりしている天馬くんだった。

 「…アンタか。」
 「こんなところで何してるの?」
 「…いや、別に。なんでもない。」
 「なんでもないなら、荷物運ぶの手伝ってよ」
 「……」
 「誘ったの天馬くんでしょ」

 少し強引だったかもしれない。

 半ば強制的に運ぶのを手伝わせる。

 「なんで来たんだよ」
 「だからさっきも言ったけど、君が来いって誘ってくれたんでしょ。」
 「遅いんだよ、…バカ」
 「え、急に辛辣じゃない?」
 「アンタが早く来たら、こんなギスギスしなかった」
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