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3月9日  【A3】

第9章 雛菊桜


 「サクヤ?」

 …こんなこと思い出してたら、すぐにバレてしまう。

 「…あぁ、そうだ!!オレ、宿題するの忘れてました!先部屋戻りますね!」

 シトロンさんの目に耐えられなくて、ニッコリと笑った。
 先に戻ったところで、シトロンさんと同じ部屋ではあるけど。

 この歳になってまで、あの人の面影を探してるなんてどうかしてる。
 引き取られた先でも、そんな類のコトバはいくらでも言われた。

 "おねぇちゃん"

 MANKAIカンパニーの、MANKAI寮101号室。
 オレの居場所。

 だけど…、

 ここがオレだけの居場所では無いように、あの人だって…。

 「"おれのおねぇちゃん"は、あの人にとって役不足なのかもしれないな…」

 ドアを開くと、案の定真っ暗で。

 この暗さのなかでなら、"オレ" は、"おれ" に戻れるから…。

 だけどこの先だって、
 どのくらい経ったって、

 "さく"に戻りたいなんて、今更いえない。

 軋む梯子を登って、天井に近いベットに寝転ぶ。

 明日になったら、どうか、"オレ"に戻れますように。

 なんて…。



ーーーーーー
ーーーー


 「咲也、芽李さんも夏組の合宿について行くみたいだぞ」

 せめて、あなたの口から聞きたかったなんて、嫉妬もいいところだ。

 「そう、ですか。」

 キーン…と耳鳴りがする。

 だめだ、

 まだダメだ。

 さゃんトしナい、と。















 "おれ"

 ハ、

 もう

 ヒツヨウナイ?



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