第9章 雛菊桜
「…それにアンタは、アイツらと話してる時の方が楽しそうだ」
語尾がモゴモゴしてる。
ちょっと待てよ、皇くんかわいいな。
「そんなことないよ。」
…と、思わずクスッとしてしまったのは、許してほしい。
「皇くん、やっぱりこの前思ったこと訂正するね。」
「なんのことだ?」
「"天馬くん"が弟でも、やっぱりいいなって思って。」
「は?!」
なんでか、ボフッと真っ赤に染まった顔に、茹で蛸のようだと思いながら、見つめる。…と、あんまり見るな!と怒られた。
「お誘いありがとう、天馬くん。」
「じゃあ!」
だけど、それとこれは別だ。
「合宿は、行けない。」
「俺が誘ったからか?アイツらなら、」
「違うよ!ちがう!誰に誘ってもらっても、今の時期仕事も忙しくてさ、それに寮のこともあるし。」
正直不安だ。
春組だけ残していくのは…。
「アンタは」
「そろそろ芽李って呼んでくれない?"天馬くん"」
「そんなことどうだって、」
「…」
「芽李さんは春組だけじゃなくて、俺たちのお世話がかりなんだろ?」
…切ない表情。
「…それはそうだけど。一応?」
次の瞬間、真夏の太陽のようなギラギラとした目が、私を捕らえた。
「なら、少しくらい付き合ってくれても…いいだろ?」
向日葵ってこんな気持ちなんだろうか。
天馬くんの必死さに、仕事も寮のことも、調整してうまくすればいいかと考えが傾く。
「大体、監督の許可と」
「それはもう取った」
「え」
…仕事の速すぎない?
というか、こんなのうなづくしか出来ない。
「仕事の都合もあるし、多分ずっとはムリだけど…」
「それでもいい。」
「ん、わかった。」
「よし!」
小さくガッツポーズをする天馬くんに、そんなに喜んでくれることかと苦笑してしまう。
「じゃあ、今夜それも含めてミーティングするからな。
夜練絶対参加で。」
寮に来て天馬くんが、こんなに嬉しそうにしてくれたの初めてだ。
「そんなに喜ぶかな」
「だって芽李さんは、あいつらと仲いいだろ。」
「それってどう言う?」
今度はむすっとする彼。
「…わかんないならいい。とりあえず、夜8時からだからな。」
「はいはい。」