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3月9日  【A3】

第9章 雛菊桜


 「…それにアンタは、アイツらと話してる時の方が楽しそうだ」

 語尾がモゴモゴしてる。
 ちょっと待てよ、皇くんかわいいな。

 「そんなことないよ。」

 …と、思わずクスッとしてしまったのは、許してほしい。

 「皇くん、やっぱりこの前思ったこと訂正するね。」
 「なんのことだ?」
 「"天馬くん"が弟でも、やっぱりいいなって思って。」
 「は?!」

 なんでか、ボフッと真っ赤に染まった顔に、茹で蛸のようだと思いながら、見つめる。…と、あんまり見るな!と怒られた。

 「お誘いありがとう、天馬くん。」
 「じゃあ!」

 だけど、それとこれは別だ。

 「合宿は、行けない。」
 「俺が誘ったからか?アイツらなら、」
 「違うよ!ちがう!誰に誘ってもらっても、今の時期仕事も忙しくてさ、それに寮のこともあるし。」

 正直不安だ。
 春組だけ残していくのは…。

 「アンタは」
 「そろそろ芽李って呼んでくれない?"天馬くん"」
 「そんなことどうだって、」
 「…」
 「芽李さんは春組だけじゃなくて、俺たちのお世話がかりなんだろ?」

 …切ない表情。

 「…それはそうだけど。一応?」

 次の瞬間、真夏の太陽のようなギラギラとした目が、私を捕らえた。

 「なら、少しくらい付き合ってくれても…いいだろ?」

 向日葵ってこんな気持ちなんだろうか。
 天馬くんの必死さに、仕事も寮のことも、調整してうまくすればいいかと考えが傾く。

 「大体、監督の許可と」
 「それはもう取った」
 「え」

 …仕事の速すぎない?
 というか、こんなのうなづくしか出来ない。

 「仕事の都合もあるし、多分ずっとはムリだけど…」
 「それでもいい。」
 「ん、わかった。」
 「よし!」

 小さくガッツポーズをする天馬くんに、そんなに喜んでくれることかと苦笑してしまう。

 「じゃあ、今夜それも含めてミーティングするからな。
 夜練絶対参加で。」

 寮に来て天馬くんが、こんなに嬉しそうにしてくれたの初めてだ。

 「そんなに喜ぶかな」
 「だって芽李さんは、あいつらと仲いいだろ。」
 「それってどう言う?」

 今度はむすっとする彼。

 「…わかんないならいい。とりあえず、夜8時からだからな。」
 「はいはい。」
 
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