第9章 雛菊桜
その日の激務を終えて無事寮に辿り着くと、珍しく玄関で出迎えてくれた皇くんから、仁王立ちしながら宣言された。
それをなぜ私に言うんだろう?そう思いながら聞き返す、
「合宿?」
「そうだ。」
「そっかぁ」
合宿かぁ、行ったことないかも…。
微妙にうまく働かない頭で、感想だけは伝えようと試みる。
…が、
今までは何かと理由をつけてそう言うお金のかかる行事は避けてきたし、みんなで行ったら楽しそうだとしか思えず生半可な返答になってしまった。
だけどなぜかドヤ顔で、
「そっかぁ、じゃない。あんたも行くんだ。」
ででんっと、効果音がつきそうな仕草でいってのけた新生夏組リーダー、皇天馬。
はて…?
「え?私も?」
「そうだ。」
「夏組と私?」
「そうだ。」
「皇くんと一緒に?」
「当たり前だろ、夏組なんだから」
「………」
「……」
「私も?」
「だから、そうだ!何回も言わせるな。全く。」
腕を組んで不満そうな皇くん。
本当に耳を疑ったんだから、聞き返すことくらいゆるして欲しい。
「そんなに俺のこと、…かよ。」
偉そうに言ったくせに最後の一言は、語尾が萎んでなんて言ったか、聞き取れなかった。
「え?」
また聞き返したら今度は、ぐっと拳を握りしめて、悔しそうに俯いてしまった。
「…だから!」
なんだろ?
「俺のことキライなのか?!」
「なんでそうなる?!」
どっちかって言ったら好きだ。
ツンデレ属性は萌だからな!!…言わんけど!
おおっと、キャラがブレブレなのは許して欲しいね!
なぜなら、早朝勤務が割と大変だったからだ!
疲れてるんだ!
わたしが長女じゃなかったらこんな激務耐えられなかった!
私はよくやった!
私はできるやつだ!
私が次女だったらできなかった!
…みたいなセリフなんかで読んだぞ?
などと真顔で考えること、0.002秒。
「俺は、皇天馬だぞ。」
うん、知ってる。知ったのは最近だけど、知ってる。
「誘われたら、みんな喜んで着いてくるのに、そんな顔するから、」
え?
どんな顔してる?わたし。
鏡見ろって?
いや無理だね、などと真顔で考えること…以下略。
っていかんいかん、皇くんの話に全集中しないと。