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3月9日  【A3】

第9章 雛菊桜


 皇くんの生き方を否定するわけではない。
 でも、きっと夏組のみんなと向き合うことができたら、考え方とか色々いい方向に変わるはずだ。

 一人でがんばらなくていいって思える、心を許せる仲間だっていることを、今の皇くんに知ってほしい。

 そう思えるのは、春組を観てたからだ。
 だって皇くんの歳の頃のわたしは、よくわからなかったから。

 春組は"家族"夏組は、…

 「友達かな」
 「何が友達?」

 聞こえた声に振り向けば、ジャージ姿の幸くん。

 「あれ、幸くん稽古終わったの?」
 「ポンコツリーダーがちょっとね。あいつ、本当に」
 「…一生懸命だよね。」

 幸くんはこんなこと言うつもりではなかったんだろうけど、彼の口からリーダーを否定するようなこと、なぜか言ってほしくなくて遮るように言ってしまった。

 …咲と皇くんが、二人で話す姿を思い出しながら言葉にする。

 「え?」

 キョトンってしてる。

 「皇くんは多分不器用気味なだけで、ちゃんとみんなと向き合おうとしてるよ、」

 幸くんも思うところがあるのか、考え込むような顔をしている。

 「って、私が言うことでも無いかな…けど、だからさ、幸くん、ちゃんと見ててあげてね。」
 「なんでオレが?」
 「皇くんには、きっと幸くんやみんなみたいな相手…絶対必要だから」

 …幸くんの目の色が変わった気がする。

 「同室だし、幸くんちゃんと皇くんの悪いところ教えてあげられるじゃん。椋くんに対するフォローもちゃんとできるし。私、みんなの事大好きになっちゃったからさ、…だから、みんな揃っての夏組にして行ってほしいんだよね。」
 「なにそれ。」
 「それにね、団結した夏組の千秋楽は、絶対いい色になると思うから。」

 まだ始まったばかりなのに、想像するだけでワクワクしてしまうのは、段々と団結してく春組を見てきたからだ。

 まぁ、春組の絆はまだまだもっとこれから、どんどん深くなっていくんだろうけど…。

 「無責任」

 はぁっとため息をついて、幸くんが呆れたように言うから、そんなの今に始まった事じゃ無いのにと我ながら思う。

 「ふ、…わりと初め会ったときから無責任だったよ。初対面の中学生捕まえてさ、私の主観でデザイン褒めてさ。」

 思い出したように笑いながら、彼らしい鋭いツッコミ。
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