第9章 雛菊桜
皇くんの生き方を否定するわけではない。
でも、きっと夏組のみんなと向き合うことができたら、考え方とか色々いい方向に変わるはずだ。
一人でがんばらなくていいって思える、心を許せる仲間だっていることを、今の皇くんに知ってほしい。
そう思えるのは、春組を観てたからだ。
だって皇くんの歳の頃のわたしは、よくわからなかったから。
春組は"家族"夏組は、…
「友達かな」
「何が友達?」
聞こえた声に振り向けば、ジャージ姿の幸くん。
「あれ、幸くん稽古終わったの?」
「ポンコツリーダーがちょっとね。あいつ、本当に」
「…一生懸命だよね。」
幸くんはこんなこと言うつもりではなかったんだろうけど、彼の口からリーダーを否定するようなこと、なぜか言ってほしくなくて遮るように言ってしまった。
…咲と皇くんが、二人で話す姿を思い出しながら言葉にする。
「え?」
キョトンってしてる。
「皇くんは多分不器用気味なだけで、ちゃんとみんなと向き合おうとしてるよ、」
幸くんも思うところがあるのか、考え込むような顔をしている。
「って、私が言うことでも無いかな…けど、だからさ、幸くん、ちゃんと見ててあげてね。」
「なんでオレが?」
「皇くんには、きっと幸くんやみんなみたいな相手…絶対必要だから」
…幸くんの目の色が変わった気がする。
「同室だし、幸くんちゃんと皇くんの悪いところ教えてあげられるじゃん。椋くんに対するフォローもちゃんとできるし。私、みんなの事大好きになっちゃったからさ、…だから、みんな揃っての夏組にして行ってほしいんだよね。」
「なにそれ。」
「それにね、団結した夏組の千秋楽は、絶対いい色になると思うから。」
まだ始まったばかりなのに、想像するだけでワクワクしてしまうのは、段々と団結してく春組を見てきたからだ。
まぁ、春組の絆はまだまだもっとこれから、どんどん深くなっていくんだろうけど…。
「無責任」
はぁっとため息をついて、幸くんが呆れたように言うから、そんなの今に始まった事じゃ無いのにと我ながら思う。
「ふ、…わりと初め会ったときから無責任だったよ。初対面の中学生捕まえてさ、私の主観でデザイン褒めてさ。」
思い出したように笑いながら、彼らしい鋭いツッコミ。