第9章 雛菊桜
なんて思ってたのは、数十分前。
1日の疲れを癒すようにお風呂に入れば、体の芯からあったまってくのがわかる。
って言っても、冬ほどほっこりしたものは感じないし、熱いんだけど。
「上がるかぁ……」
少しのぼせて、ふらっとしつつ着替えて、その場から出る。
部屋に戻る前に、咲がまだ起きてるか確認しないと……。
「んー………」
お湯に浸かりすぎたせいか少し重い体をどうにかこうにか、動かしてトボトボと歩いていると外から聞こえたやりとり。
天馬くんと咲?
「どうしたの?まだ稽古中だよね」
「……休憩」
「そっか、お疲れ様!」
良いのかな、このまま聞いていて…
と、思いつつ体は動かせないまま。
「アンタ、春組のリーダーなんだよな?春組は、どうだったんだ?」
「どうって?」
「だから、なんか、もめたりとか、うまくいかなかったりとか……」
盗み聞きはよくないけど、皇くんもこんなこと思ってたんだなんて、感心してしまった。
そっか、かずくんに言った話こそ天馬くんにしてあげるべきだったかな。
「あぁ!最初はやっぱり大変だったよ!」
まぁ、でも皇くんって潤滑油っていうよりかはガチガチのギアって感じだもんな…
いい意味で。
「アンタは何もしてないのか?」
そんな皇くんの言葉に思わず飛び出していきそうになったけど、
咲の、
「オレは特に何も」
なんて言葉が聞こえてきたから、とりあえず出した拳を引っ込めた。
「それで、なんとかなるのかよ?!」
そっか、天馬くんって…。
「なんとかなるっていうか、みんななんとなくまとまっていったから」
まぁ、春組はある程度穏やかなメンバー揃ってるしなぁ。
夏組みたいにギア全開!!って感じでもないし。
その辺はリーダー大変だろうし…。
特に子役からやってる皇くんからしたら、…。なんて、私には思うことはできても経験してないから、確実なことは言えないけど。
「仲良くって……そんな必要あるのかよ。」
そんな一言になんでぎゅっと胸が痛んだんだろうか。
「え?だって、意思疎通ができた方が、芝居も上手くいくでしょ。」
「わざわざみんなでとか、そういうのわかんねー…
個人がベストを尽くすのが、なによりも大事だろ?」