第9章 雛菊桜
「いやぁ、初の読み合わせかぁ。」
「芽李参加するの?」
「ううん。今回は遠慮した。」
そう言いながら、夏組への差し入れを用意する。
「明日、仕事で朝早くて。仕入れついていくことになったんだよね。」
「へぇ、」
「いつもは行かないんだけど、よかったらついてきて良いよって店長がね。」
カウンター席に座ってるのは、真澄くん。
夏組の稽古についてる監督に少しでも会いたいからと、差し入れを置いてくるのを手伝ってくれるらしい。
話を振ってきたのにあまり興味がなさそうだ。
すまんね、いづみちゃんじゃなくて。
「真澄くん、本当に差し入れ頼んで良いの?」
「うん、最初からそう言ってる。アンタも明日早いんなら、たまには、早く寝たほうがいい」
「ありがとう」
春組にもよく作ったサンドイッチ…ではなく、三角くんが好きなおにぎりをつくって、ラップをかけた。
なにより、年齢層も低いしね。
ガッツリ食べたいかなって思って。
ま、春に関しても咲やら、真澄くんやら、まぁ綴くんも学生だったけど。
「できた。じゃあ、本当よろしくね。私もここ片付けたら寝るね。」
「任せて。」
私からおにぎりの乗った大皿を受け取って、稽古場へ向かう姿を見て、こっそりと小さい子がお使いにいく番組を思い出した。
そんなこと本人に言ったら、無言で怒られそうだけど。
なんて思いつつ、手を動かす。
…さて、片付けも済ませたことだし、お風呂に入って寝ようかな。
「芽李さん?」
「佐久間くん、どうしたの?」
「もう寝ますか?」
「うん、まぁお風呂入ってから寝ようかとは思ってたけど?」
どうしたんだろう、この時間に珍しい。
「そうですか…」
「どうしたの?」
「いえ、寝れそうになくて…ほら、最近まで公演のこととかやることがあったじゃないですか、」
「たしかに、あっという間だったけど忙しかったもんね。クセが抜けないか…」
「はい、あ。でも大丈夫です。寮の中少し歩いたらまた寝てみるので。」
「そう?じゃあ、私お風呂入り終わってまだ佐久間くんが寝られなそうだったら、ホットミルク入れてあげるね。」
「わぁっ、ありがとうございます!」
かわいすぎる、うちの子。
早くお風呂から上がってこないと…。