• テキストサイズ

3月9日  【A3】

第9章 雛菊桜


 「いやぁ、初の読み合わせかぁ。」
 「芽李参加するの?」
 「ううん。今回は遠慮した。」

 そう言いながら、夏組への差し入れを用意する。

 「明日、仕事で朝早くて。仕入れついていくことになったんだよね。」
 「へぇ、」
 「いつもは行かないんだけど、よかったらついてきて良いよって店長がね。」

 カウンター席に座ってるのは、真澄くん。

 夏組の稽古についてる監督に少しでも会いたいからと、差し入れを置いてくるのを手伝ってくれるらしい。

 話を振ってきたのにあまり興味がなさそうだ。

 すまんね、いづみちゃんじゃなくて。

 「真澄くん、本当に差し入れ頼んで良いの?」
 「うん、最初からそう言ってる。アンタも明日早いんなら、たまには、早く寝たほうがいい」
 「ありがとう」

 春組にもよく作ったサンドイッチ…ではなく、三角くんが好きなおにぎりをつくって、ラップをかけた。

 なにより、年齢層も低いしね。

 ガッツリ食べたいかなって思って。

 ま、春に関しても咲やら、真澄くんやら、まぁ綴くんも学生だったけど。

 「できた。じゃあ、本当よろしくね。私もここ片付けたら寝るね。」
 「任せて。」

 私からおにぎりの乗った大皿を受け取って、稽古場へ向かう姿を見て、こっそりと小さい子がお使いにいく番組を思い出した。

 そんなこと本人に言ったら、無言で怒られそうだけど。

 なんて思いつつ、手を動かす。

 …さて、片付けも済ませたことだし、お風呂に入って寝ようかな。

 「芽李さん?」
 「佐久間くん、どうしたの?」
 「もう寝ますか?」
 「うん、まぁお風呂入ってから寝ようかとは思ってたけど?」

 どうしたんだろう、この時間に珍しい。

 「そうですか…」
 「どうしたの?」
 「いえ、寝れそうになくて…ほら、最近まで公演のこととかやることがあったじゃないですか、」
 「たしかに、あっという間だったけど忙しかったもんね。クセが抜けないか…」
 「はい、あ。でも大丈夫です。寮の中少し歩いたらまた寝てみるので。」
 「そう?じゃあ、私お風呂入り終わってまだ佐久間くんが寝られなそうだったら、ホットミルク入れてあげるね。」
 「わぁっ、ありがとうございます!」

 かわいすぎる、うちの子。
 早くお風呂から上がってこないと…。
/ 553ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp