第8章 椿寒桜
なんて前のページでは言ってましたけどね、耐えましたよ。
大人なんでね。
「衣装やりたい、やらせて」
「もちろん。」
「んじゃ、オレもゆっきーの衣装にあわせて、ビジュアルデザインしよっと」
「今回もよろしくね!」
「全部手作りかよ……本当に大丈夫か?」
前言撤回!!
「どうどう、芽李さん。」
綴おにいちゃんにとめられた、しょぼんぬ。
でも、一言だけ言わせてほしい。
「皇くん、そんなこと言ってると今日の夜ご飯皇くんのだけにんじんづくしなんだからね!カレーよそうとき、ルー入れないで人参だけ寄っていれるんだからね。」
「な、」
「言っちゃ悪いけど、佐久間くんの一人初演舞台で支配人が作ったやつよりだいぶクオリティもいいしね?てか、比べちゃいけないしね、むしろいいたい、あのロミジュリを作ったの春組のみんなはもちろんだけど、この御三方がいたからこその千秋楽だからね?
そもそも幸くんの衣装はもう」
「はいはい、ストップストップ。アンタ本当によく喋る時の至さんに似てきたな。」
綴お兄ちゃんに以下略、パート2。
「皇くん聞いてないし。」
皇くんどころか、みんな聞いてくれてないし。
むしろ、支配人がたった今持ってきたビデオに夢中だ。
ねぇ、支配人いつ来たの?
結局その日、私の言葉を遮ったビデオ。でも、そのビデオを見るデッキがなくて、かずくんに任せることになったんだけど…
ビデオの中身どんなのが入っていたんだろうか。
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明日の朝の支度とか、色々終えてわたしはうるさすぎるBGMを聞きながらやけに座り心地の良いソファの上で、皆木先生によって書かれた夏組の台本を読んでいる。
それはもう何回も読み返してる。
で、同じところで5万回くらいわらって、同じくらい泣いてる。
これ、コメディーよね?
いや、でも考えてみてよ。シェヘラザードの健気さ泣けん?
「あのー、芽李氏?」
「何、神奈川の市」
「うん、神奈川県茅ヶ崎市ね。そっちじゃなくてね、」
「なんですか?」
「なんで当たり前のように、俺の部屋で台本読んでんの?」
「ベスポジなんで、っていうか、夜食用意させたの至さんじゃないですか。」
「そうだっけ。」
「そうですよ。」