第8章 椿寒桜
「で?」
「で?とは?」
「そんなに読み込んでるなら、内容教えてよ」
「やだよ、ネタバレになるじゃん。もう控えめに言って最高だから、自分で読んだほうがいいと思います」
特にラストシーンが神がかってた。
天馬くんがやるアリババかぁ……………。
幸くんのシェヘラザードに、椋くんのシンドバット、魔法のランプの魔神三角くん。
かずくんがやるアラジンもいいなぁー。
「夏組想像するだけで尊い。早くみたい」
「すっかり、そっちに寝返ったか」
「人聞きの悪い。わたし、まんかいかんぱにー箱推しなんで。
みんな尊いし、まだいない秋と冬にも思い馳せてるから。」
そういうと、ため息をつかれた。
ギィっと椅子が動いて、私が座るソファの背もたれに手をかけたのは至さん。
そりゃそうだ、至さんの部屋で至さんしか居ないんだから。
「えっと?」
ソファ丼?
結んでいた前髪をほどいて、髪をかきあげた至さんがフッと空気を作る。
目に熱が帯びていた。
「あのー…」
「モンタギューの次は、夏組かよ」
「ぐっ」
「ジュリアスのやつにも言ってきかせないとな、うかうかしてられないと。
ロザライン…いや、芽李お前は」
「むりむりむりむりむり。まってむり。本当無理。ティボルト待って、ほんとむりだから、無理。」
こんな服着てるのに、ティボルトにしか見えないしね?
あのときは、マキューシオ推しと言いましたけど、ティボルトも推しなんですよ。
てゆうかみんな推しなんですよ。
「ほんと!むり!まじで!むり!」
「ふ、うぶ?」
あ、いつもの至さんに戻った。
「なるほどね、役でオトせばいいんだな。」
「え?」
「今度綴に、芽李好みの役で書いてもらおうって話。けど、油断しとくとまたするからな?
俺の中のティボルトがやきもち妬いちゃうからさ。」
きらっとはにかんで、ウインクした至さん。
完成されてらっしゃる。
「ぐっ、なにそれ、俺の中のティボルトって!かっこよぉ、っ、言ってみたい」
「…………お前、感性バグってんね?」
そんな、酷すぎる。
バグらせるセリフ言ったの至さんじゃん!!