第8章 椿寒桜
「できた…」
そう言いつつ、手に持ってきた本を差し出して、倒れた綴くん。
血の気がなく、かずくんの言う通り本当にグロッキーな状態だ。
なれないな、駄目だ。
また…思い出しちゃう、、。
その時ぎゅっと、手を握ってくれたのはやっぱり三角くんだった。
大丈夫って言わなくても伝わってくる。
そうだ、大丈夫なんだ…。
そう思った時パッと手が離れて、三角くんがニコッと笑って八重歯が見えた。
みんなにも、バレてない。
「おにぎり食べる〜?」
「大丈夫、すぐ起きるから」
寝息が聞こえて、本当の意味で落ち着く。
綴くんをどうにかソファに寝かせた。
「私、何か飲み物入れてくるね。みんなも飲むよね、」
「一旦部屋行ってくるけど、その後飲む。」
「ボクも、飲みたいです」
「オレもオレも!」
「オレ手伝ぅ〜」
わかったと返事をして、支度をしてるうちに綴くんがおきたみたいだ。
みんなもちょうどよく戻ってきて、私はテーブルにそれぞれの好きそうな飲み物を運んだ。
「なるほど、それで全員が主役ってことか。」
「オレはさんかく役〜?」
「ごめん、それはない」
「一応、メインの主役アリババ役はリーダーの天馬で、シェヘラザードが幸。」
役の説明を聞きながら、私までワクワクしてきた。
幸くんの姫とか、絶対かわいい。
ブロマイド買いまくろう。
「ねぇ、ねえってば、聞いてる?」
「え?」
「台本、アンタもいるんでしょ。」
幸くんが手渡してくれた本を、私も受け取って念のためいづみちゃんを見れば、にっこり笑って答えてくれた。
「いいの…?」
「もとよりそのつもりでしょ。」
「ワクワク隠せてませんよ、芽李さん。嬉しいっすけど」
「あとで綴くんのサイン…皆木大先生の大サインをお願いしたい所存なんだが。」
「大サインってなんだよ、しません。」
「ケチ。」
なんてやりとりをしていると、天馬くんの言葉が耳に入って、思わずワナワナしてしまった。
「でも、アラビアン・ナイトなんて、装飾が安っぽいとカッコつかないだろ。
衣装はこいつの手作りで大丈夫か?」
もう、かっちんですわ。…それは。
馬鹿にした感じ?もう拳握っちゃったかんな!怒。