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3月9日  【A3】

第2章 河津桜


 そんなこんなで2人と1羽での生活も慣れてきた頃…ーーー

 ピンポーンー…

 それは、私がここに居着いて以来、初めてとも言える来客で。

 「はーい、今……」
 「あ"?」

 睨みつける黒いコートのその人は、すらっと背が高く色白で目鼻立ちがはっきりしてる。

 「え?あ、えーっと…モデルさん?」

 思わずそう呟かずには、居られなかった。

 「……はぁ。

 古市左京だ。松川は居るか?」

 イケメンにため息つかれたツラい…
 なんて思いつつ、松川さんを呼びにいく。

ーーーーーー
ーーー

 倉庫の掃除をすると言いながら、楽器を触っている彼に声をかけると慌ててそれを後ろでに隠したことに気づかないふりをする。

 「松川さーん、お客様です!」
 「え?」
 「古市さ」
 「いないって言ってください!!」

 ヒェーと言いながら大道具の後ろに隠れる彼が大人に怒られることを拒む子供みたいで……って既視感だぞこれ。
 と、呆れつつ分かりましたーと言っておく。

ーーー
ーーーーーーー

 「すみません、今いないみたいで」
 「…邪魔するぞ」
 「え!?ちょ?!」

 私を通り抜けて、ズカズカと上がっていった背中を追う。

 いきなり止まるから鼻をぶつけてしまった。
 禍々しいオーラを急激に出す古市さんに。

 「あ、すんませ…」

 「ま〜つ〜か〜わ〜」

 倉庫の前で止まった足に、感心する。

 …よくわかったなぁって。

 「ひぃ〜!!」

 縮こまっている松川さんを尻目に、居留守なんて使うからとちょっと意地悪いことを考えたりする。

 そんな古市さんの足元にこっそりとスリッパを置けば、うんたらかんたらと松川さんに説教しながら履いてくれた。

 「あ。」

 「あぁ"?」
 「団員の方?」
 「違いますよー」

 せっかく思い付いたのに…と、また閃く。

 「弁護士だ!」
 「こんな柄の悪い弁護士なんて嫌ですよぅ」

 なんて、涙目で強気なこと言うから、キッと睨まれちゃうんだと思う。

 「借金取りですよう…」

 「え?!こんなイケメンなのに?!ホストとかの方が似合いそうなのに?!

 あ!劇団員いないなら古市さんスカウトすれば良いじゃないですか!監督でもいいし!!ね!」

 「はぁ…

 ところで、さっきから馬鹿なことばかり言っているお前は何だ。」
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