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3月9日  【A3】

第2章 河津桜


 ざっと見たところ、広い部屋なのに足の踏み場もない。

 「適当に座ってください〜」

 と言いながら、ソファに散らばった資料をまとめてくれた支配人さんこと松川さんに、ペコっと頭を下げる。

 「それでは、MANKAIカンパニーとこの寮について説明しますね!
 まずは春夏秋冬で4組の………」

ーーーー
ーーー
ー…

 「それから、部屋についてなんですが、ここからここまでは団員の部屋なので、ここの部屋を〜」

ーーーー
ーー


 私、やってしまったかもしれない。

 なんやかんやでこの寮を立て直すのを手伝うという話の流れに流されてしまった…

 住むところがないからと楽をしようと、いや、困っている人につけ込もうとした時点で神様が怒ったのかもしれない…

 そうに違いない…

 ヤクザに借金て、
 監督から始まり団員ゼロから集めるて、
 春夏秋冬で6人ずつ、24人て…

 というか、まずこの荷物の多いこの寮の片付けからしなきゃいけないなんて…

 まぁ、でも住む場所があるだけありがたいと思わなきゃいけないのか…


 …と、自分の部屋として与えてもらった一室で思い悩むこと5分。
 考えていても仕方ないとまずは自分の部屋の掃除に取り掛かる。


 「ぎゃー!!!!!!!」


 聞こえてきた叫び声に慌てて下に降りればキッチンから煙が上がっている。

 「ちょっと?!大丈夫ですか?!」
 「せっかく、芽李さんがカンパニーに入所が決まったのでお祝いでもしようと、私が腕を振おうと思いまして…こんなことに」

 悪戯に失敗して怒られた子供みたいにしょんぼりする松川さんに思わず可愛いと思ってしまったのは、少しだけ悔しい…

 「私のために、ありがとうございます。怪我はありませんか?良かったら手伝わせてください。」
 「うぅ、怪我は、ありません。すみません、芽李さん」

 この人は不器用というのか、なんというか…。

 料理になるはずだったものと黒焦げの鍋は後でどうにかするとして、無事だった食材と使われなかった鍋たちを使って作れるものを考える。

 「とりあえず夕飯、作りましょうか」
 「私、寿司がいいです!」
 「いや、それ鍋使わないやつ!!」
 「鍋使わなきゃダメですか?」
 「刺身もなくてどう作るんですか」


 ※急募※
 ツッコミ要員の劇団員!
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