第8章 椿寒桜
「あー、でもこれいたるんにナイショね?」
キャンディをころっと口に含んで、かずくんが笑った。
「りょーかい、」
そんなことを、至さんが…
恥ずかしくて、あったかい。
今が夕方でよかった、夕日のお陰で赤くなってるはずの耳に気づかれないで済むはずだから。
「あ、見てみて!ゆっきーと、むっくん」
ほんとだ、最近になって見慣れた制服が見える。
「2人も誘って一緒に帰ろっか」
「賛成!メイメイナイス♪」
2人の方に行くと、無言ではなれたのが目に入った。
「おつピコ!二人とも制服激マブ、やばたん〜!なんで離れて歩いてんの?」
「カモフラージュ」
「何それ?何それ?芸能人みたいでかっけー!」
「芽李さん、かずくんとお買い物ですか?」
「ううん、さっき会ってね。荷物持ち手伝ってくれたの。」
幸くんがかずくんと並んで歩いて、その分私は天使…いや、椋くんと歩く。
「わぁ、少女漫画の王子様みたいです!ボクも手伝います!一個ください」
かずくんとの話をすると、椋くんまで私の手から荷物を抜き取ってくれた。
「オレも持つ。」
幸くんまで。
「でも、二人とも鞄」
学校帰りで、カバンも重いだろうに…。
「大丈夫です、こう見えても鍛えてるんです」
ぐっ………
「そうそう、それにオレたち男だし」
…ぐっ、ぐぐぐ、っ、
「ゆっきーかっけー!」
「うるさい、ところで芽李さん機能停止してるけど何?気持ち悪いんだけど」
これなんてゲーム?
逆ハーすぎない?
なんでみんなこんな優しいの?
将来いい旦那さんになる未来しか見えないな?
「おーい、メイメイ?」
かずくんの声で現実に戻る。
幸くんが怪訝そうに目を向けていた。
「?何この車」
なんだその目線の先、私じゃなくてよかった。と、幸くんの目線を辿ればききーっと隣に止まった車。
「ポルチェじゃん!」
「きーみのポールチェガッパーな〜の」
「いま村人Cいないんだから、そういうのだめ。」
ペシっと突っ込まれる。
「道の真ん中で騒ぐな。恥ずかしい。」
そんな中真っ黒な車から降りてきたのは、俺様リーダー様だった。
「こんな狭い道にこんなでかい車で入ってくるアンタの方が恥ずかしいから。」