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3月9日  【A3】

第8章 椿寒桜


 珍しく静かに聞いているかずくんに言葉をつづける。

 「これから先、絶対かずくんは誰よりもなによりも、夏組のみんなにとって、必要不可欠だと思う。」
 「…」
 「それにね、ずっと言っておきたかったことがあって。」
 「待って待って、そういうのって!メイメイさぁ、そういうのって、舞台終わって千秋楽で言うもんじゃね?あと、普通に恥ずかしい、こんな街中で」
 「ううん、きっと千秋楽は千秋楽で、そういうのはいづみちゃんの役だと思うわけよ。で、せっかく2人きりだしやっぱりいっておきたくて。」

 わかった、降参。というようにまた聞き役に徹してくれそうなかずくんに続ける。

 「かずくんがいたから、わたしカンパニーに辿り着けたの。あの日、ビロード町の名前をかずくんに聞かなかったら、多分ここにいなかった。みんなにも会えなかった。
 道に迷った時も、かずくんに会えなかったら私帰れなかったかもしれない。」
 「あったね、そんな事も」

 クスッと笑ったかずくん。

 「春組のみんなもね、色々あって団結したんだ。ほんとに、羨ましいくらいに、…それでね、多分夏組のみんなは春組よりも年齢層が若いし、かずくんみんなの中でお兄ちゃんでしょう?」
 「まぁね、」
 「しかもこうして、誰かを助けてあげられる優しさとか色々ちゃんと持ってるし、なによりかずくんのデザインの感性すっごく好き。春組のパンフとか、フライヤーとか、あとホームページとか、すっごくよかった。だから、夏組のも楽しみだし、だけど、無理とか無茶とか我慢とかそういうのはしてほしくない」
 「…うん?」
 「ごめん、語っちゃった。かずくんや夏組のみんなのことももっと知りたい。舞台も早く見たい、プレッシャーかけちゃったかもしれないけど、私絶対みんなならいい千秋楽になるって分かる。
 何かあったら、絶対力になるからね?」
 「…なるほどねん。」

 フッと笑って、またゆっくりと2人で歩きます。

 「何がなるほど?」
 「いたるんがさ、言ってた意味少しだけ分かった気がする」
 「何か言ってたっけ?」
 「色々意味はあるけど、舞台続けようって思った1番の理由は"芽李に見せたいため"ってさ。」
 「え、そんなこといついってたの、」
 「打ち上げのときに、サクサクとメイメイ一瞬抜けたっしょ?そん時、酔いながら言ってたよん。」
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