第8章 椿寒桜
珍しく静かに聞いているかずくんに言葉をつづける。
「これから先、絶対かずくんは誰よりもなによりも、夏組のみんなにとって、必要不可欠だと思う。」
「…」
「それにね、ずっと言っておきたかったことがあって。」
「待って待って、そういうのって!メイメイさぁ、そういうのって、舞台終わって千秋楽で言うもんじゃね?あと、普通に恥ずかしい、こんな街中で」
「ううん、きっと千秋楽は千秋楽で、そういうのはいづみちゃんの役だと思うわけよ。で、せっかく2人きりだしやっぱりいっておきたくて。」
わかった、降参。というようにまた聞き役に徹してくれそうなかずくんに続ける。
「かずくんがいたから、わたしカンパニーに辿り着けたの。あの日、ビロード町の名前をかずくんに聞かなかったら、多分ここにいなかった。みんなにも会えなかった。
道に迷った時も、かずくんに会えなかったら私帰れなかったかもしれない。」
「あったね、そんな事も」
クスッと笑ったかずくん。
「春組のみんなもね、色々あって団結したんだ。ほんとに、羨ましいくらいに、…それでね、多分夏組のみんなは春組よりも年齢層が若いし、かずくんみんなの中でお兄ちゃんでしょう?」
「まぁね、」
「しかもこうして、誰かを助けてあげられる優しさとか色々ちゃんと持ってるし、なによりかずくんのデザインの感性すっごく好き。春組のパンフとか、フライヤーとか、あとホームページとか、すっごくよかった。だから、夏組のも楽しみだし、だけど、無理とか無茶とか我慢とかそういうのはしてほしくない」
「…うん?」
「ごめん、語っちゃった。かずくんや夏組のみんなのことももっと知りたい。舞台も早く見たい、プレッシャーかけちゃったかもしれないけど、私絶対みんなならいい千秋楽になるって分かる。
何かあったら、絶対力になるからね?」
「…なるほどねん。」
フッと笑って、またゆっくりと2人で歩きます。
「何がなるほど?」
「いたるんがさ、言ってた意味少しだけ分かった気がする」
「何か言ってたっけ?」
「色々意味はあるけど、舞台続けようって思った1番の理由は"芽李に見せたいため"ってさ。」
「え、そんなこといついってたの、」
「打ち上げのときに、サクサクとメイメイ一瞬抜けたっしょ?そん時、酔いながら言ってたよん。」