第8章 椿寒桜
「はー、やっぱ籤運なさすぎ。
でもまぁ、ナスは買ったし、マヨネーズもOK、あと人参でしょ…んー。大丈夫かな、」
買い忘れはないかと思いつつ、あったらあったでまた買いにこようと思いながら歩いていると、急に片手が軽くなった。
ひったくり?!
「メイメイっ、半分持つよ♪」
「びっくりした、ひったくりかと思った」
「へへ〜っ、びっくりさせてめんご!後ろから見た時可愛い子がいるなーって思ってついね!」
すっと荷物を持ってくれたのは、かずくんだった。
「ふふ、ありがとう。あ、そうだキャンディ食べる?」
「え?」
荷物を持っておまけに、私のペースに合わせてとなりを並んで歩く彼に何かお礼がしたいと、買い出し先のスーパーで引いた福引の景品のキャンディがポケットにあるのを思い出して、差し出す。
「レシートで福引できたんだけど、わたし籤運なくって全部外れて、参加賞でキャンディとティッシュもらったの。」
それを受け取りながら、嬉しそうに笑ってお礼を言ってくれたかずくんに、参加賞も悪くないかと思えた。
「マジかー、残念だけど実用的じゃん!サンキュー!メイメイ」
「どういたしまして。…たしかに、そっか。しかもさ、こうやってかずくんにあげられたからある意味ラッキーだったね。」
「オレに?」
「うん、キャンディすきでしょ?」
立ち止まったかずくんにどうしたのかと思って、私も一旦止まって振り向けば驚いた顔をしてる。
「すき!すげー、なんで分かったの?!」
そんなに驚く?
「言ったことあったっけ?オレ…ははは〜ん、まさか!超能力?!」
「ふふ、見てたらわかるよ。」
珍しい顔してる。
嬉しそうな恥ずかしそうな、どうしたかずくん。
「オレ、初めてかも!タピオカ好きなん?とかはよく言われるけど、実はキャンディのが好きなんだよねん!なんか見られてたと思うと恥ィーね!」
「大袈裟すぎ。…かずくんってさぁ」
「ん?」
「多分、すんごい良い子だよね、」
「は?えっと?」
「ごめん、話変わっちゃったけど。今言っときたくて」
自分でも考えなしに言ってしまったと思いながらも、続ける。
「みんなのこともよく見て動いてるし、夏組のオーディションの時もかずくんが居なかったら大変なことになってたと思う。」