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3月9日  【A3】

第8章 椿寒桜


 「猫さんと遊んでたら、こんな時間になっちゃって」
 「そっか、だから葉っぱまみれなのね。…お風呂入ってこよっか。靴脱いで窓枠からおりてくれる?」
 「怒ってる?」
 「怒ってないよ、でも次からは玄関から来よっか。」
 「鍵無くしちゃって」

 ショボーンとした顔に、なるほどと思いながら言われた通りに靴を脱いで、中に入ってきた三角くんの頭に乗ってた葉っぱを払う。

 「後で鍵、一緒に探してあげる。どこで無くしちゃったの?」
 「多分、昨日お部屋で無くした」
 「そっか、じゃあ後でお部屋で探してみよう。ないと困るもんね。」
 「はーい」

 てててと、部屋のドアを開けて出て行った三角くん。
 そういえば、部屋の外で咲が待ってるんだった。

 窓に鍵をかけて、またカーテンをしめる。

 部屋を出るとポカーンとして立ってる咲と目があった。

 「佐久間くん、ごめんね。おまたせ。」
 「…どうして三角さんが?」
 「鍵無くしちゃって、寮の中には入れなかったみたい」
 「だからって…そうですか、」
 「佐久間くん?」
 「…はい?」
 「怒ってる?」

 ぶんぶんと首を振った彼を見て、ならよかったと一息つく。

 「さてと、じゃあ次はかずくんだね。」
 「はい。一成さんどこにいるんでしょう?」
 「部屋にいなかったら、バルコニー行って中庭も見てみようか」
 「そうですね」

 まず、部屋。

 トントン

 「はーい」

 あ、椋くんの声。
 ガチャっと開いたドア。

 「もうすぐ夜ご飯だから声かけに来たの。
 幸くんもここでしてたんだ、宿題」

 幸くんは集中してるみたいで、ブツブツ言いながらノートにむかってる。

 「ありがとうございます!そうですよ〜っ」
 「そっかそっか、頑張ってるね」
 「いえいえ、そんな僕なんて…幸くんは凄いですけど」

 しょぼんとしながら笑ってる。

 「椋くんも凄いから、謙遜しすぎ。
 待ってるから、キリのいいところでおいでね?ところでかずくん見なかった?」
 「カズくん?…さっき部屋にきたんですけど、支配人に用があるって言って出ていきましたよ?」

 支配人…。

 「そうなんだ?わかった、ありがとう。じゃあ、また。」
 「はいっ!」

 ドアが閉まって、ハテ…と思いながら、支配人に用なんてなんだろう?と考えるも、あまり思いつかないな。
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