第8章 椿寒桜
「猫さんと遊んでたら、こんな時間になっちゃって」
「そっか、だから葉っぱまみれなのね。…お風呂入ってこよっか。靴脱いで窓枠からおりてくれる?」
「怒ってる?」
「怒ってないよ、でも次からは玄関から来よっか。」
「鍵無くしちゃって」
ショボーンとした顔に、なるほどと思いながら言われた通りに靴を脱いで、中に入ってきた三角くんの頭に乗ってた葉っぱを払う。
「後で鍵、一緒に探してあげる。どこで無くしちゃったの?」
「多分、昨日お部屋で無くした」
「そっか、じゃあ後でお部屋で探してみよう。ないと困るもんね。」
「はーい」
てててと、部屋のドアを開けて出て行った三角くん。
そういえば、部屋の外で咲が待ってるんだった。
窓に鍵をかけて、またカーテンをしめる。
部屋を出るとポカーンとして立ってる咲と目があった。
「佐久間くん、ごめんね。おまたせ。」
「…どうして三角さんが?」
「鍵無くしちゃって、寮の中には入れなかったみたい」
「だからって…そうですか、」
「佐久間くん?」
「…はい?」
「怒ってる?」
ぶんぶんと首を振った彼を見て、ならよかったと一息つく。
「さてと、じゃあ次はかずくんだね。」
「はい。一成さんどこにいるんでしょう?」
「部屋にいなかったら、バルコニー行って中庭も見てみようか」
「そうですね」
まず、部屋。
トントン
「はーい」
あ、椋くんの声。
ガチャっと開いたドア。
「もうすぐ夜ご飯だから声かけに来たの。
幸くんもここでしてたんだ、宿題」
幸くんは集中してるみたいで、ブツブツ言いながらノートにむかってる。
「ありがとうございます!そうですよ〜っ」
「そっかそっか、頑張ってるね」
「いえいえ、そんな僕なんて…幸くんは凄いですけど」
しょぼんとしながら笑ってる。
「椋くんも凄いから、謙遜しすぎ。
待ってるから、キリのいいところでおいでね?ところでかずくん見なかった?」
「カズくん?…さっき部屋にきたんですけど、支配人に用があるって言って出ていきましたよ?」
支配人…。
「そうなんだ?わかった、ありがとう。じゃあ、また。」
「はいっ!」
ドアが閉まって、ハテ…と思いながら、支配人に用なんてなんだろう?と考えるも、あまり思いつかないな。