• テキストサイズ

3月9日  【A3】

第8章 椿寒桜


 「美味しいです!やっぱり、芽李さんは凄いです!」
 「ふふ、すっかり咲也くん芽李ちゃんにぺったりだね。」

 微笑ましいと言う表情をするいづみちゃんに、カウンター越しに詰め寄る真澄くん。

 「咲也、お前ずるい。監督、俺もカレー味見する」
 「はいはい、待ってね。真澄くん、まだ火通ってないから。」

 待てをくらって、なんだかうな垂れた犬の耳が見える。

 「真澄くんも相変わらずだね」

 おぉ、今度はピンッと立った。

 「うん、すき。監督、カレー作ってるアンタ1番かわいい。」
 「はいはい、ありがとう。」

 真澄くん、犬だったら黒い柴犬かなぁ。
 なんて思いながら、サラダをお盆に乗せる。

 「ふふ、佐久間くん、これ運んでくれる?」
 「はいっ」

 元気よく返事をしてくれて、運んでくれる。
 そんな咲を見ながら、ふと疑問に思ったことを尋ねる。

 「そういえば夏組のみんなは?」

 いづみちゃんが口を開こうとした時、代わりに答えたのは真澄くん。

 「天馬は仕事で、幸と椋は宿題。部屋でやってる。
 三角はいなくて、一成は知らない。」
 「そっかぁ、あ。じゃあ、かずくんと三角くん私探してこようかな。ついでに部屋にカバン置いてくる。」
 「ありがとう、芽李ちゃん。」
 「あの、」
 「ん?」
 「オレも行っていいですか?」
 「いいけど、鞄置いてくるだけだよ?」
 「その後三角さんと一成さん探しに行くんですよね」
 「ま、まぁ…。じゃあ、行こっか。」
 「はいっ」

 キョトンとしたみんなの顔に見送られつつ、2人でまず部屋に向かう。
 
 咲は後ろから着いてきてる。

 「佐久間くん?」
 「…」
 「咲也くん」
 「…」
 「咲、」
 「はい?」

 うーん………

 「何かあった?」
 「今日ですか?今日は…バイトがなかったので、河原に行って発声練習して来ました」
 「そっか」
 「一成さん達どこに行ったんでしょうね。」
 「そうだねぇ……あ、ちょっと待っててね。」

 部屋の前で咲には少し待っててもらい、その間に鞄を置こうとしたんだけど…

 ートントン

 窓から音がしてまさかと思いつつ、カーテンを開ければ…

 「三角くん、ここ二階だよ?」
 「えへへ、ごめんなさーい。」
 「どうしたのかな?」
/ 546ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp